まいまいデートシリーズ⑤ 福も鬼もその他もろもろみんな 内!
京のとっておき節分めぐり
「鬼は外、福は内」
そう言って、人は晴れやかな顔で豆をまく。
でも、と思う。
「鬼は出ていけ」と叫ぶ心に鬼がいるのではないか。
誰の心にもある邪な心を一身に引き受け、外に追いやられる役割の鬼さん。
今回は、そんな鬼に敬意を払い、鬼さんと仲良くなるべく?まいまい京都の
【節分祭・吉田編】鬼に山伏、覆面の公家!面白すぎる節分祭、4社寺はしごツアー
というツアーに参加させていただいてきました。
「京都には季節ごとに様々な行事があるけれど、1年で最もバラエティ豊かでおもしろいのが節分」
とは、まいまい京都の名物ガイド・吉村さんのお言葉。
今回のツアーでは、そんな最もおもしろい節分祭の中でも選りすぐりの4社寺をご案内くださいます。
京都には、年に一度、節分にだけ開かれる不思議な扉があるようです。
そっと 中を覗いてみましょう。
順路は
1.熊野神社 → 2.聖護院 → 3.須賀神社 → 4.吉田神社(解散)
となります。
では早速いってみましょう。
◆◆◆
集合場所の熊野神社ではツアーに先がけ、鬼にまつわる福豆・・
ではなく豆知識を伝授していただきました。
古来より京都で鬼門とされている北東の方角は、十二支の動物たちをぐるりと並べる数えかたでは、
丑、寅の方角に当たります。
ウシ、トラ・・。
そう、これが、鬼の頭にはウシのツノ、腰回りにはトラのパンツといういでたちの所以だそうです。
さらに、昔話・桃太郎で鬼退治のお供についてくる動物さん達と言えば?
サル、トリ、イヌ・・。
そう、これは北東の反対、南西の辺りから始まる面々ですね。
(南西グループのヒツジさんは、ちょっと弱そうだから戦力外だったのかな)
また、節分には邪気を払う豆まきをするのが一般的ですが、立春の前日であることから、
新しい1年を迎えるためのいろいろな行事があるのだそうで、
ツアーのおおとりを飾る吉田神社では、毎年年越し蕎麦の屋台も立つそうです。
ここ熊野神社には、福を招く福引きつき福豆の販売※や
茶菓の振る舞いがあり、多くの人出賑わっていました。
「福豆と福引のセット1500円にトライした。
いろんな賞品があるそうで、お米とか自転車とか、聞こえてくる。
そして結果はタオルが3つでした。
5等賞という感じやけど、なんでもきれいにしてくれるご利益のあるタオルかも知れないね。
煎茶とおまんじゅう、というおまけも付いていて、縁日みたいな空気にひたれた。
それにしても神社やお寺の煎茶はどこも上等だよね。
おいしい煎茶、こんなところにも福があるね。」
※ツアー後、福豆をふたりで山分けしようと、梛の葉飾りの付いた紙袋を開くと
中から出てきたのは福豆ではなく、おかきが4つと、金棒を象った小さな和紙でした。
あるサイトに「福袋や福引券が付いた節分奉斎券」という表現があったので
私たちが買ったのは、おそらくそれだったのだろうと思います。
見えないと、よくわからないまま適当に買っちゃうことが多いので、
考えようによっては毎日が福袋。当たるも楽し、当たらぬもまた楽し。
「福おかき ふたりで山分け 2個2個に」
にこにこ、ここにも小さな福が生まれました。
後日談:上記のおかきのうち1袋は本物の福豆だったそうです。
にこにこの中に、ちゃんと福がいました。
次に向かったのは、普段は非公開の、塀に囲われてちょっと謎めいた雰囲気の聖護院。
京野菜や京の銘菓にその名が使われていることからも歴史の深さと風格を感じる聖護院は
足を踏み入れると、パオーという法螺貝の音。
そして「ようまいりー、ようまいり」という独特の節回し。
塀の中には、どこか異国めいた、外からの印象以上に不思議な空間が広がっていました。
ここは山伏の総本山なのだそうです・・といっても、そもそも山伏って何なのか
よくわかってないyuki。
「修験者のことです」
「それって職業ですか?」
「職業・・ではないような」
「ああ、お給料は出ないってこと?」
「どうだろう・・」
その山伏さん、1灯50円の献灯でご祈祷を授けてくださっていたので
並んでご祈祷していただきました。
直後、行列をなす参拝者に祈祷を繰り返す山伏さんのリズムが一時停止。
ん?yohくんが山伏さんに何か交渉してる!?
「修験道の山伏さんがあちこちに。
天台系の袈裟はフワフワの梵天(ぼんてん)がついている梵天袈裟というものです。
… と説明してもらったので、ご祈祷をしてもらったときに、ふわふわを触らせてもらった。
手で触れさせてもらうには、このときがチャンスのはず、と狙っていたのでした。」
そうやったんやね。
言われるままに手を延ばすと、私の指先も小さなクッションのようなふわふわにふれました。
何でも、山で修行中に疲れたら座るのに使うとか、使わないとか・・。
「座布団になるのは違うアイテムで、ふわふわの梵天は転んだときのクッションだったような。」
あっ ほんと。調べたら、座布団はシカやタヌキの毛皮でできた「引敷(ひっしき)」というものでした。
山伏さんの装束や持ち物は、ひとつひとつに仏の教えを象徴する意味があると同時に
険しい山での修行に耐える登山服としての機能も兼ね備えているという解説も
うんうんと興味深く聞いてたのに、記憶からこぼれ落ちてました。
思い出のピース、いっこ復活。
節分の2日間は、本殿や宸殿(しんでん)も特別公開されていました。
花々の描かれた豪華なふすま絵は、裏に回るとうさ耳の鳥がひっそり描かれていたり、
不動明王ばかり3体もあって、それはよんどころない事情でひき捕り手のない像を引き取ったものだとか。
仮御所だったこともあるという由緒ある建物を、まるで勝手知ったる自宅のように
次々と興味深いエピソードを添えて案内してくださる吉村さんのおかげで、
短い時間でしたが、聖護院の深奥を十二分に感じることができました。
ここには、実は山伏だけでなく赤、青、黄色の鬼さんもうろうろしていたようです。
そしてなんと!聖護院の鬼はずっと 内にいていいそうなのです!
2月2日に境内を気ままにお散歩した鬼は、3日の追儺式で山伏たちと戦いを繰り広げた後、
改心してみんなと一緒に豆まきをするのだそう。
聖護院では「鬼は外」は言わず「福は内」だけなのだという話に触れ
救われたような気がしたのは、他の誰でもない私自身が鬼だからかもしれません。
昔、幼い娘のわがままに腹を立てては、自分が鬼のように感じてぽろぽろ泣いたのを思い出します。
憎み合うのではなく、皆で幸せに共存できるこの小さな世界。
塀の外にも広がっていくといいな・・。
ここでは福豆もいろんなパッケージで販売されていましたが、
最初の熊野神社でも1500円分も買ったし、さすがに豆はもういいや、と素通り。
(買ったのはおかきだとも気づかず・・。)
他にも法螺貝のおみくじの授与などもあったようです。
今度はみんなで豆まきをする日にも訪れてみたいです。
聖護院のお向かいの須賀神社は、小さいながら、今回巡った4社寺の中で・・
いえ京都中、日本中、ひいては世界中の珍行事ランキングにもランクインしそうな行事が
しめやかに執り行われていました。
それは懸想文(けそうぶみ)、つまりラブレターの販売というけったいな行事。
販売しているのは覆面の公家さんというからますます怪しげですが、
買っている人もいらっしゃるようでした。(当たり前かも知れませんが。)
「ふみうり、京都らしいふしぎなキャラだよね。
ニーズのあるところビジネスが生まれる。
男の魅力は恋文の文章力で決まる。
どうしてもあの娘を振り向かせたい。
もしもし、よろしければ優れて上出来な一筆をお譲りしますよ。
お安くはありませんが、それで恋が成就するのなら、高い買い物ではないと存じます。
お、お、おねがいするぞよ。
しかし、なぜ節分にふみうりなのだろう。」
この懸想文売というのは、実際に江戸時代にあった風習なのだそうです。
なんでも、お公家さんが素性を隠すために覆面をして、小銭稼ぎにラブレターの代筆をしていたのが始まりで、
次第に、男女の仲を取り持つだけでなく、様々な縁を結ぶ縁起物として普及していったのだとか。
そのふみうりがここ須賀神社で、節分の二日間だけ復活するのだそうです。
けったいな行事と書きましたが、この懸想文売はれっきとした神社の神事で、
現代では節分の須賀神社でしか手に入らない懸想文、良縁などの御利益のあるおまもりとして人気とのこと。
ちなみに中身は達筆で和歌が書かれていて、前年の干支の文字が入った名前の人から、
今年の干支の文字の入った名前の人への手紙になっているそうです。
そろそろ次の目的地へ・・というころ、吉村さんは抜かりなく?
「すがたもち」という自分用のお土産を手にしていらっしゃいました。
毎年買っている、と言われていたので気になって調べたところ、
これまたどうやら節分の須賀神社でしか手に入らない幻の京菓子のようです。
漢字で書くと「須賀多餅」、柚子味と梅味があり、2こセット(1客)で買うと
節分限定の「豆茶」と一緒にいただくことができるそうです(セットで300円)。
しかしなぜ節分にふみうりなのか?は調べきれず謎のままなのですが
(2月3日、ふみ、の語呂合わせかなあ?)
節分に買い求めてバレンタインデーにプレゼント、なんていうのも楽しいかもです。
ただし達筆らしいので、OCRなどでの読み上げは期待薄・・
何て書いてあるかは内緒、ということにしておきましょう。
ではいよいよラストの吉田神社へ。
他の3つの神社は割と近い距離に集まっていましたが、吉田神社へは
通るこちらも自然と小声になるような、静かな住宅街をしばらくてくてく。
いたるところで節分行事が行われ、聞きしに勝る節分ムード一色だったこの界隈でも、
ここ抜きには語れないというほど別格なのが吉田神社。
節分祭や厄払い発祥の神社といわれており、2月2日から4日の3日間で、
なんと50万人もの人出があるというから驚きです。
今回のツアーも、この吉田神社の追儺式に照準を合わせて時間設定されていました。
といっても、狙いは追儺式ではなく、追儺式を終えた鬼たち。(いわゆる出待ち?)
追儺式の会場は2時間前から場所取りをしないと何も見えないという説明のもと、
ツアーの一行(いっこう)は石段と坂道をひた登ります。
目的地に着いてほどなく、宮中行事を継承する追儺式で古式ゆかしく闘ってきた
四つ目の方相氏(ほうそうし)と赤・青・黄色の鬼たちが、
地響きを立てて金棒を振り下ろし、唸り声をあげながらゆっくり辺りを旋回。
待つことも場所取りもせず、そんな鬼たちにふれられそうな距離で見物できる、
そこはまさに穴場スポットでした。
「吉田神社はすごくたくさんの人。
そんな中、詳しい人しか知らない鬼の移動ルートの、人が少ない場所に案内してもらえた。
たぶん最前列にいた。
鬼がのっしのっしやって来る。
怖がっているのは子供たちだけ。
せっかくなので、いっしょに怖がる怯え声を上げてみた。
そのほうが節分らしく思えたけど、周囲から白い目で見られていたかも知れない。」
鬼が「がおー」というたびお子様たちが「ぎゃー」、なのに
「ほら、鬼さんに触ってみれば?」なんてのんきなお母さん。
異世界のもののような恐ろしげな鬼と生活感あふれるご家族のやりとりの交差も
節分祭ならではの風景に感じました。
(何やら嘘っぽいおびえ声も交じってましたが・・)
鬼見物をした場所のすぐそばには、厄塚というものがありました。
手触りの感じでは、しめ縄を巻きつけた立派な柱が天に向かってそびえています。
「さわるといいよ」とにこやかに声をかけてくださったかたの言葉通り
柱の足下も探ってみると、そこには俵が置いてあるようでした。
この立派な厄塚は節分にだけ登場するもので、ふれると参拝者の厄を塚に封じてくれるだけでなく
大元宮の社殿とつながった綱から八百万(やおよろず)の神にも通じ、
新たな1年を健康に過ごせる御利益があるのだそうです。
神様、いま私たちに優しさの福をくださったかたが、
新しい1年、お健やかに過ごされますように。
帰り道は、登ってきたのとは別の正規の?参道をくだっていきました。
屋台のびっしり並ぶ坂道は、普段の姿が想像しがたいほど人で埋め尽くされていて、
節分祭の規模を肌で感じることができました。
一方で、いかに最初のルートや見物場所が穴場であったかも改めて実感。
まいまいの皆様、そして今回ガイドをしてくださった禅和のMさん、
ありがとうございました。
◆◆◆
節分ツアー、いかがでしたでしょうか。
今まで、鬼を追い払うことにためらいを感じていましたが、
この日感じた鬼たちは、蔑みの気持ちではなく畏敬の念を持って扱われ、
儀式では堂々と主役を務めていました。
おそらく先人たちは、災厄の前で己の小ささを知り、
畏れ多くも鎮まっていただくために神に祷りを捧げたのちに
新しい年を迎えていたのだろうと、その気持ちにも添うことができました。
節分に開かれた扉
それは、人への理解も鬼への理解も深まり、
さらに山伏やふみうり、四つ目の方相氏など変わった友達もできる
不思議で素敵な扉でした。
京都はほんとにおもしろい。
びっくり箱?いえ、宝石箱です。
(2020.2 by yoh & yuki)
【参照サイト(外部リンク)】
●鬼も豆をまく聖護院の節分会
https://kyototwo.jp/post/attractions/9339/
●懸想文売が出没 須賀神社の節分
https://www.smartmagazine.jp/kansai/article/sight/8151/
●吉田神社の節分について(公式サイト)
http://www.yoshidajinja.com/setubunsai.htm
●節分に年越しそば?
https://www.jisyameguri.com/zatsugaku/yoshida-setsubun-soba/
ページの先頭へ戻る
みんなのおでかけレポート集へ
1.トップページへ戻る
2.図のない京都図鑑(お出かけガイド)へ
3.お花つみガイド(お手洗い情報)へ
4.お役立ち情報玉くしげへ
5.杖休め茶屋へ
|