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梅雨の季節も心カラフルに♪ 欲張り京都満喫ツアー2022
梅宮大社・紫陽花の小径散策と生八つ橋づくり体験【②レポート】



 梅雨の季節の風景をしめやかに彩る紫陽花には雨がよく似合う・・
でも、みんなでおでかけするときはやっぱり晴れてたほうがいいなあ。
なんて図々しいこと思ってたら、6月12日は雨上がりの晴天、
理想を絵に描いたような紫陽花日和となりました。
参加者の皆様の日頃の行いに手を合わせ
集合場所に向かう道中、日傘に突然パラパラと雨の音。
ドキッ。
それが朝日にきらめく街路樹と風の悪戯とわかってほっと一安心。
そんな、ねこバスを待つトトロみたいな瞬間を入口に、
虹色京都の大冒険、はじまりはじまり♪

第1部 梅宮大社 神苑散策
第2部 生八つ橋作り体験

イベント概要のページはこちら

第1部 梅宮大社神苑にて 宝探しにいざ、出陣!

この日の参加者22名(視覚障害者12名、サポートのかた10名)が
集合場所の阪急松尾大社駅を出発したのは、定刻通り10時を少し過ぎた頃でした。
京都市の西の玄関口、阪急桂駅から嵐山線に乗り換え、
終点の嵐山駅の一つ手前に位置するのがこの松尾大社駅。
一大観光地・嵐山と隣り合わせているとは思えないこぢんまりとした駅前の空間は、
そこで張り上げる私の声ごと、往来を行き交う車の音にかき消えてしまいそう。
挨拶は後回し、と全員の受付を済ませたところで梅宮大社に向けて出発しました。
駅を背に踏切を越え、桂川にかかる松尾橋を渡り、せまい歩道は誘導の手を
背中に回してもらって1列縦隊を成して進むこと約10分。
やがて梅宮大社へと続く参道が左に現れます。
二つ目の鳥居をくぐった辺りのスペースで、ようやく円陣を組むことができました。
「えー、ではみなさん、これから4つのグループにわかれてくださいねー。
 まずは猿組さん。名前いいまーす」
「へっ?猿?動物系?」
「はい、お次は犬組」
「やっぱり動物や」
「次はキジ組」
「ん?猿、犬、キジ、もしかして次は・・」
「そう、最後は桃組。
 猿、犬、キジ、桃と言えば鬼退治、なんですが、
 準備の都合上、きょうは鬼はいませんので、宝物取り放題です。
 それぞれのグループに、集めてくる宝物のリストをお渡ししますので
 みなさん、きょう1日かけてじゃんじゃん集めてくださいね。
 それでは出発!」

視覚障害者の集まるイベントでは、せっかく参加したのに
サポートについてくださったおひとりとしかお話しできなかったという経験が
何度かあります。
見えないと、自分では誰がいるのか、そもそも誰かいるのかもわからないし、
今近くに誰かいるのかとサポートのかたに尋ねるタイミングを窺うも難しい。
楽しさよりしんどさを多く感じる経験は、次の一歩を躊躇わせることにもなってしまいます。

今回は、小グループにわかれて当事者同士も楽しくコミュニケーションを図りながら、
ひとりよりみんなで、見えることも見えないということもわかちあい、
世界に満ちている様々な彩りをよりゆたかに感じあう経験ができればと、
みなさんに、昔話でおなじみの宝島探検隊になってもらいました。
(よい4人組を思いつかなかったので、なぜか梅宮大社に桃太郎という
なんかちょっと惜しい取り合わせになってしまいましたが・・)
みんなで見つけたい「宝物」それは・・
①彩り(10色以上)
②音(擬音語で3つ)
③手ざわりや形のおもしろいもの(3つ)
④今日イチオシの味(ひとり1つ)
こんな感じです。

人数分の拝観料を納めて神苑の門扉をくぐると、
そこはまさに、お伽噺か絵巻物の中にでも入り込んだような世界。
池のほとりの木漏れ日の小径を一歩進むたび、色も形も手ざわりも異なる紫陽花が
優しく咲きこぼれて私たちを出迎えてくれました。
といっても私には、光景が目に飛び込んでくるということはもうありません。
何度も、何度も経験しても、そこに広がっているはずの光景が見えないという衝撃は
心をきつく締め付けます。
それでも、オレンジ、ライム、ピンクに白の縁取り、紫の蕾の間に開く黄色い花・・
「それ、ほんとに紫陽花なんですか?」
思わずそう聞き返してしまうほどバラエティー豊かな花の色は、
サポートの方々だけでなく神苑のそこここに飛び交う感嘆の声の華に乗り、
鮮やかに脳裏に描かれていきます。
大きく立派な花、小さくかわいい花、それぞれに少しずつ異なるやわらかさ、
ぎざぎざの花びら、おわんのようにぷっくりした花びら、
玉ではなく烏帽子のような形状の花、普通の紫陽花より高いところにも咲く山紫陽花・・
(厳密には花びらではないとかいうお話はさておき)
そうした色以外のたくさんの彩りも、はずんだ声に誘われて高く低く伸ばした手の指先で、
こちらは自分の身体でじかに感じることができました。

「どんな色がありましたっけ?」
「白、水色、ピンク」
「あ、さっき、まっピンクって教えてもらいました」
「濃いピンク?」
「いえ、まっピンク」
そんな風に、伝えてくださったかたの感覚そのままに、
見つけたものを書き記していってもらいました。
他のグループではどんな宝物が集まってるかなあ?

第2部 生八つ橋作り体験 宝探しの旅は続く

梅宮大社を予定通り11時30分過ぎに出発した一行は、次の目的地
「八つ橋庵とししゅうやかた」を目指したのですが・・。
実は、下見の時には私が勘違いして別の建物(八つ橋庵かけはし)へといってしまったため、
当日は梅宮大社前から京都市バスで約5分の南広町で下車したあとはぶっつけ本番、
地図を確かめてもらいながらのドキドキの道中でした。
その分、12時半からの体験予約にちょうどよい時間に到着したときの安堵感、
そして私のガイドをしてくれたケアサポート禅和のMちゃんはじめ
サポートの皆様への感謝の思いもひとしおでした。
みんな無事に着いて本当によかったです。

ここでは生八つ橋づくり、七味の調合、衣笠丼の仕上げを体験したあと、
できたての衣笠丼とにしんそばを味わいながら宝物発表会を行いました。

「えー、ここでいきなり読者の皆様への司令です」
「へっ? 参加者じゃなくて、読者?」
「そう、今これを読んでくださってるあなたへのミッションです。
 ここから始まる第2部の体験にも、七色のアジサイが出てきますので
 見つけてくださいね」

ということで、体験スタート!

●生八つ橋づくり
材料は、あるものは一人分ずつ、あるものは人数分まとめてテーブルに
用意していただいてあり、施設のスタッフのかたの説明に合わせて
見える参加者のかたが「きなこ?はい、このお皿」などと
適宜サポートしてくださったおかげで、困った気持ちになることなく、
楽しく体験ができました。
生地になる予定の粉類と水をゴムべらでまぜまぜ。
思ったより濃度の薄い、しゃわしゃわ状態になった生地を、一人ずつ用意された
小さなせいろに流し入れて蒸し上げると、もちもちおいしそうな八つ橋生地に変身。
「あつ!あつ!」とクッキングシートごと生地を取り出し、きなこをまぶしたプレートに移して
スケッパーで3等分・・
「だいたいこんなものかな」
「・・ちょっとだけ直しますね」
ここでも、見えるかたがそっと補整してくださいました。
それぞれの生地を、ニッキ入り、抹茶入り、何も入れないプレーンにして、
こねて、伸ばして、四角く切って、3種類の餡を包んだら、はい、出来上がり!

少しのサポートがあれば見えなくてもできることがあり、そこにできる喜びがある。
それは日々の暮らしや仕事においては、生きる喜びにも、生きていくことそのものにもつながります。
個人や社会の認識において現在「できない」に分類されてしまっていることの中にも、
少しサポートの手を添えることで「できる」に変わり、サポートする人、される人双方の
社会参画につながることもまだまだ見つけられるのではないか。
帰宅後、お持ち帰り用のパックに詰めた手づくりの八つ橋のおいしさに、
この日サポートしてくださった方々への感謝の想いを重ねつつ、そんなことを考える
機会にもなりました。

●七味の調合
続いてはテーブルを移動しての七味の調合体験です。
最初は、七味の調合って薬味を混ぜるだけ?なんか地味?
と思っていたのですが、やってみると楽しい!
最初に麻の実をすりばちで擦ります。
この麻の実が結構堅くて、適当にすりこぎをぐるぐる回すとすり鉢からはじけ飛んでしまいました。
押さえつけてぐりっと回す、というのを繰り返すうちになんとなくコツが掴めてきて、
はっと気づくと、無心でごりごりやってる間に、みなさん 次の行程に移ってました。
あとは白ごま、黒ごまも好みの加減にすりつぶし、その他の材料を
目安の匙数を教えてもらいながら、自分好みの分量で調合。
山椒と陳皮は多め、唐辛子は少なめ、ハバネロはなし・・やっぱりほんのちょっと入れようかなあ。
最後に漏斗を使って小瓶に詰め、仕上げにシールを貼ったら
はい、オリジナル七味の出来上がり!
いい香り!
小瓶に入りきらなかった分はこのあとお昼ご飯にいただきます♪

●衣笠丼の仕上げ
ここでまたテーブルを移動。
さっき八つ橋作りをしたテーブルに戻ると、八つ橋セットが片付けられ、
代わりにおあげや玉子を準備してくださってある様子。
だしと調味料を煮立て、お上げを煮含めたら玉子を2回にわけて溶き入れます。
「ここで2回にわけるのがポイントです。
1回目の玉子はかきまぜずしっかり火を通し、2回目はさっと回しかけて半熟で火を止めたら
丼によそったご飯に載せて、はい、出来上がり!

●いよいよ昼食
最後にもう一度テーブル移動・・
今回、この予期せぬ大移動が何度もあったこと、しかもテーブルの人数が毎回
まちまちだったことで、見える方々には想定以上にご負担をおかけしてしまい申し訳なかったのですが、
みなさん手際よく臨機応変に移動をサポートしていただき本当に助かりました。
最初は猿さんはこっち、キジさんはあっちとやっていたのですが、
人数は合わないしお腹はすいてるしで、いつしかパズルのようにあいたところを埋める方式に。
それも、いろんなかたと隣り合わせることになって楽しかったです。
自分で作ったできたて衣笠丼を手に移動したテーブルに、京都名物
(実は私はこの日初めていただく)ニシンそばも運ばれてきて、みんなで
「いただきまーす!」

待ってましたと昼食をとり始めたのは14時を回った頃。
たくさん歩き、いろんな体験に奮闘した疲れが半ば癒えたあたりで
本日集めたお宝発表会となりました。
まず最初は彩り。
いちばんたくさん集めたのは?キジ組さんの10色!
見事目標達成、パチパチ!ということで、キジ組さんが集めた色をご披露いただきました。
鳥居の朱赤。
新緑の緑。
あやめの紫。
アジサイのブルー、ピンク、白。
梅の実の黄色。
黒猫の黒。
アズキの色。
トウガラシの赤。

発表してくださった彩りは、この日辿った道のりそのものでした。
今もこれを書きながら、思い出がひとつひとつ蘇ってきます。
鳥居って、黒やコンクリート色や木の色など、実は色も素材も様々だけど、
梅宮大社の鳥居は赤かったんだなあ。
印象的なものや危険なものは見えない人にも伝わることが多いけれど、
見える人にとって当たり前のものは逆にその存在が伝わってこないことがあります。
鳥居の朱赤、その一見 目新しいものではない色の共有から、
そんな大切なこともみなで共有できました。

4つのグループそれぞれの宝物リストを見比べると、ひとつのグループだけが収集した色からは
そんなのもあっったんだ、と新たな気づきが生まれたり、
そういえばあった、と埋もれかけた思い出が蘇ったり。
3つのグループに宝物として捕獲?された「黒猫」など
複数のグループで収集されている色からは、その注目度の高さも窺えたり。

音の発表では、集めた音の中からひとつずつ、グループごとに声を揃えて
音まねをしてもらいました。
「ガランガラン」
あっ、神社らしい音、風景の背景に厳かな音色を奏でていましたね。
「ピチャピチャ」
これは何の音?
「手水の水音」
梅宮大社の手水のお水は御神水と呼ばれる自然の水なのだそうです。
そんな響きも風景に調和していましたね。
「サワサワ」
風の奏でる心地よい葉ずれの音色。
「ギョッギョッ」
これは水辺の誰か。(カエルか虫か鳥?)
この水辺の生物の合唱も、ひと月前に下見に訪れたときとは
少し違っていて、音の描く風景にも季節の移ろいが感じられました。
音の発表では、なぜかタイミングが合わず、「せーの!」と
3度もやり直してくださった猿組のみなさんの挑戦にみんなで拍手!
楽しいひとときをありがとうございました。


食事の後は約30分のフリータイム。
お土産を買ったりお手洗いを済ませたり・・
私はこのとき、別グループだった藤原さんとお話しすることができ、
宝塚社協ボランティア活動センターで今年の5月から視覚障害に関するおしゃべりサロンを
2ヶ月ごとに開催されているという藤原さんと、自分にできる活動を続けましょうと
それぞれの歩みにエールを贈り合いました。

帰りは施設のご厚意で解散場所の阪急西京極駅まで送迎バスを出していただけることになり、
15時15分、みんなでバスに乗り込みました。
10分ほどの短い時間でしたが、時間の許す限りでみなさんに感想をお聞きしていくと、
手作り体験が楽しかった、できてよかったと数人から感想が続いたあと
紫陽花も綺麗だったと散策へのコメントをいただき、
あ、そういえば紫陽花も見に行きましたねとみなで大笑い。
車中に流れる和気藹々の雰囲気に、1日をご一緒したみなさんとの
心のつながりを感じられて嬉しかったです。
最後に、紫陽花の季節になって、花が咲いても見ることができないのは
やはり寂しいです、と大切な心の声も共有いただきました。
見えないことがある、できないことがある、その悲しさ、悔しさ、情けなさ、切なさ・・
周囲にも、自分自身にさえもごまかしてしまいがちな心の痛みもわかち合い、
それでも埋まらない思いも受け止め合って、その先で笑顔を交わし合えたら
そのとき雨上がりの彩りを、心ひとつに感じ合えるのではないでしょうか。

今回の経験が、1日限りの楽しい思い出にとどまらず、
これからの日々に少しでも心を照らす光となれば嬉しいです。
ときには雨が降ることも、つらいこともあるけれど、心に虹色の光を感じながら
見えない道のりに潜んでいる楽しみを見つけながら、これからも歩いていきましょう!

麻の実、ごま、トウガラシ、ハバネロ、山椒、陳皮、青のり、ケシの実・・
ほら、ガラスの小瓶の中にも七色の味彩(アジサイ)。
読者のみなさん、うまく見つけられましたか?

みんなのお宝大公開!
各グループで集めたお宝一覧はこちら


♪藤原さんの「ほろほろおしゃべりサロン」ご紹介記事(外部リンク)
※yukiはfacebookのサイトが確認できないので、ご紹介記事の掲載されている、
しらさぎアイアイ会さんという姫路の当事者会のサイトへのリンクです。
他にもいろんなイベントが紹介されてます。(2022年6月28日現在)


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