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春はもふもふだょ テンちぇるちゃん♪


「テンちぇるちゃん」「テンちぇるちゃ〜ん」「テンちぇるちゃぁ〜ん」

「ハァ〜イ、テテンチェルチェル、テテンチェル〜♪」

 ほんの数日でしたが、テンちぇるちゃんと島国を堪能したミヤコちゃんも
ヨーロッパに帰る日が来ました。
鞍馬の長老は、全山上げて壮大な送別会を催そうとしていたようですが、
事前に気付いた三郎くんの手引で、こっそりと帰る事にしたのです。
毎日のように長老や芙慟に「あのお方はどうであった」「今日はどのような具合で
あったか」「どうじゃ、嫁には来てもらえそうか」「誰か良いと思う者の名など
言ってはおられなかったか」と、日に何度も何度も問われ、ほとほと疲れ果てて
しまっていた三郎くんと、テンちぇるちゃんだけがお見送りです。
「私もたまにはヨーロッパに帰るから、その時は、キョウちゃんも呼んで
皆で会おうね。」
と少々しんみりとするテンちぇるちゃんに
「あっ、ヨーロッパにいくんなら、おっ俺もついて行ってやろうか。
ほら、道中になんかあったら大変だしさ。
いや、俺も外の世界を見て、世の中の広さを実感しないといけないとか
思うわけでさ、ほら、そういう事ができるのって若いうちだけだって言うだろ。
それに、ほら、遠い所なんだし、一体で行くより、二体で行ったほうが道中も
楽しいだろうしさ。」
身ぶり手ぶりも大げさに熱弁をふるう彼に、
「そうだね、でも、ヨーロッパまでの移動って、それぞれの地区にガーディアン
(守護天使)がいるし、よほど道を離れた所に行かない限り、危険はないよ。
私も、世界を見ておくのは良い経験になると思うの。
がんばってね。」
あっ、いや、俺はテンちぇると・・・、いや、なんでもないよ。」
小首を傾げて三郎くんを見る彼女の前では、それ以上の事を言えなくなってしまう
彼なのでした。
まったく、もっとガンガン押さなきゃねぇ・・・。
そんなちょっとしみじみとしてしまっている彼女たちの所に、三体の烏天狗が
降りてきたではないですか。
「あちゃ〜、御山の誰かに嗅ぎつけられたかなぁ。」
と、後で文句の一つも言われるかなとその烏天狗達を見上げていた三郎くんの顔が
一瞬で緊張に染まり、テンちぇるちゃんとミヤコちゃんを守るように前に一歩
踏み出したのです。
土埃を舞い上げ、降り立ったのは、三郎くんが見た事のない烏天狗でした。
顔は知りませんが、その御山によって特色のある衣は、忘れようとしても
忘れられる物ではありません。
「高野党」、彼らの装いだったのです。
三体の烏天狗のうち、後ろの二体は、降り立ったその場から動きませんでしたが、
先頭にいた一体は、溢れかえる闘気を放ちながら近づいてきたのです。
その顔は歯がギリギリと音を立てていると錯覚させるほど喰いしばられ、
その目は目の前の者を視線だけで射殺すような眼力を放っていたのです。
さすがにその異様な雰囲気に気押されそうになった三郎くんでしたが、
ズイと一歩前に出ると
「おいっ、なんだよっ!。
手を出してくるなら、この鞍馬が御山にこの烏天狗ありと言われ・・・っ。」
と口上を述べようとした彼を「ガキに用はない。」とあっさりと押しのけ、
ミヤコウェルの前に立ったのでした。
「ちょっとっ!、ミヤコちゃんに、なにか用なのっ!」
と二体の間に割って入ろうとしたテンちぇるちゃんを手で抑え、ミヤコウェルが
その烏天狗の前に出たのです。
どちらも無言のまま緊張した時間が流れ
最初に口を開いたのは、烏天狗の方でした。
「改めて名乗らせて頂く、ワシは高野党の邪祇。
後ろの者は、ワシの兄者で、羅鳳(ラオウ)と屠鬼(トキ)と申す者。
二体とも、既に妻帯しておるので、先日の嫁取り合戦には出てはおらぬ。」
軽く頭を下げた二体でしたが、羅鳳とミヤコウェルの視線がふと交差しました。
その瞬間、互いにすぅと目を細め、二体の闘気がぶつかりあったかと思うと
辺りの空気が一瞬で灼熱し、沸騰したのです。
「ぬぅっ」
闘気を爆発させた羅鳳が、一歩前に出ようとしましたが、隣の屠鬼が
にこやかな笑みを浮かべたまま彼の腕を取り、
「兄者、ここは邪祇の場でございましょう。」
と声をかけると、羅鳳も、
「むぅっ」
と闘気を抑え、踏み出した足を元に戻したのでした。
なにやら一触即発な空気の漂った中、邪祇の声が続きます。
「先日は高野の御山の者達が失礼いたした。
まさか、あの短時間に、あれだけの数を全て沈められてしまうとは、そなたの実力
真に天下に並び立つ者はおらぬであろうと再確認いたした。
ワシは、まだまだそなたと肩を並べるには遠く及ぶものではないが、
いつか必ず、そなたと比肩し得る者となってみせよう。
そして、後ろの屠鬼が持っていた何かを受け取ると、
「ワシは、女子と関わった事があまりないのでな、何をお贈りすればよいのかが
判らぬのだが、女子はこういう物が好きだと聞き、そなたが今日欧州に帰られると
聞いてな、用意させて頂いた。
思う所もあるやも知れぬが、受け取っては頂けぬだろうか。」
あんたも、もう赤い烏2号でいいんじゃないのというぐらい顔を赤く染めた彼が
彩りも鮮やかな花束をグイと差し出すと、ミヤコウェルはなんの躊躇もせず
受け取り、その花の香りを嗅いだのでした。
「ありがとうございます、とても香りのよい花ですね。
なにかお返しをしたいのですが、あいにくと何も持ってはいないもので・・・。」
と何かを思い出したようで、髪をまとめていたリボンを外すと、邪祇に
手渡したのです。
「今はこんな物しかありませんが、次に再戦する時のチケットとでも思って
頂ければ嬉しく存じます。
次にお会いします時を、楽しみにしています。」
と、相変わらずの無表情でしたが、テンちぇるちゃんには、彼女が頬笑みを
浮かべているのだという事が判りました。
「いや、なにもワシは闘いたいとは・・・。」
が、その言葉を途中で止めた彼は
「そうだな、闘いの中で出会った者同士、闘いの中で再会いたすのが
道理というものか・・・。
判った、ワシもそなたと再び相見える事楽しみにしておくといたそう。」
受け取ったリボンを大切に手に握りこむと、「では、別れは言わぬ」と、翼を広げ
後ろの二体 共々に、飛び去っていったのでありました。
嵐のように過ぎ去っていった三体をしばらくも見上げていたのち、
「あ〜、畜生っ、もうちょっと時間があれば、あんな奴ら俺がのして
やったのによぉ。」
地団太を踏んで悔しがるのは三郎くん。
テンちぇるちゃん、男の子には見栄とか意地と言うものがあるんだから、
そんなジットリとした目で見つめるのはやめてあげなさいね。
 ちなみにミヤコちゃんのバリキリアへのお土産は
「八つ橋バラエティー詰め合わせセット」でした。
意外と、昔ながらの「ニッキ味」が好評だったそうです。
 後日談。
「さあ、いくらでもかかってこいっ、この程度、なんの鍛錬にもならぬわっ!」
邪祇は一人、別の御山の烏天狗を相手に拳を揮っていました。
相手方からの苦し紛れの六尺棒の一振りが、なんとしたことか
彼の首から下げていたお守りに引っ掛かり、その紐を
引き千切ってしまったのです。
風に飛ばされ深い森の中に落ちて行くお守りに、一瞬とはいえ呆然としてしまった
彼でしたが、みるみるその身体が怒りに震え、不動明王もかくやという
顔となると、
「うおぉおぬぅぉおぉおぉれえぇぇぇぇっ!、貴様、この代償は万死に値すると
思い知れぇぇーーーーーーーっ!。」
以降の彼の闘いぶりは、まさに鬼神のごときそれであったと言います。
闘いの後、辺りの茂みの中から、
「無い・・・、無い・・・、どこに行った・・・、無い・・・、無い・・・。」
と、深夜まで、何かを探す者の絶望に満ちた声が聞こえ、きっと失った自分の首を
探す怨霊が現れたのだ、との噂が実しやかに流れましたとさ。

(CMキャッチ)
「テンちぇるちゃん」「テンちぇるちゃ〜ん」「テンちぇるちゃぁ〜ん」
「ハァ〜イ、テテンチェルチェル、テテンチェル〜♪」

いつもより暖かな春の日。
お寺の縁側に座って話をしていたテンちぇるちゃんと小雪さんの前に、どこから来たのか
白黒のぶちの猫が、小雪さんの脚に顔を擦りつけてきました。
気付かないでいた彼女が、突然の感触に「ヒャッ!」と声を上げ、足元を見てみますと
ゴロゴロと喉を鳴らした猫が一匹、「ミャァ」と鳴きながら彼女を見上げて
いたのです。
「なんおす、どこから入ってきおしたん?。」
脇から手を入れて持ち上げ、膝の上に乗せると、猫はそこが指定席であるかのように
ゴロゴロと喉を鳴らしながら気持ちよさそうに丸まったのでした。
「へぇ、よく懐いていますね。」
と自分も抱きたそうに膝の上の猫を覗きこむテンちぇるちゃんに
「ほんま、どこの猫はんやろ。
 こんなけ懐いていたはるんやし、どこかで飼われていやはるんとちゃいおすか。
 そやけど、うち この猫どっかで見た覚えがありんおす。
 どこで見たんやろ・・・。」
小雪さんの声が、途中でとまりました。
そして、固まった姿勢のまま、猫を見つめると、
「あんたはん、まさかチコはんやおまへんやろな・・・。」
その声に反応したのか、猫がひょいと顔を上げると、まるで彼女の言葉を
肯定するように「にゃ〜ん♪」と鳴いたのです。
「あっっ、あきまへん、すっかり忘れておしたわ!。」
まさに、それを合図にしたように、お寺の塀の向こうに、大きな波のうねりが
持ち上がってきたのです。
それは、白、茶色、黒、灰色など複雑にちりばめられたもふもふの毛玉の群れだったのです。
波が塀にぶつかり、溢れたうねりが、塀を乗り越えると、ボトボトと庭の中に
落ちてきました。
それらは、一粒一粒が鳴き声を上げ、四足となって縁側に向けて走り始め、
粒が線に、線が面に、面が厚みを持った壁となって押し寄せるのに時間は
必要ありませんでした。
驚きのまま、翼を広げ空中に逃げたテンちぇるちゃんのすぐ足下をもふもふの毛皮の波が流れ過ぎていきます。
ミャァ〜、ミャァ〜♪」と一匹一匹の声を聞くだけならば、それは聞く者の心を
穏やかにし、優しい気持ちとさせてくれた事でしょう。
ですが、それが数百、いえ数万でしょうか、もはや数えるのが馬鹿馬鹿しく
なるほどの数となると、そんな事は言っていられません。
とにかくも、あの中に巻き込まれなくてよかったと胸を撫で下ろしていた
彼女でしたが、
「これは一体なんの騒ぎなんでしょう?」
と隣の小雪さんに問いかけても、答えが返ってくることはありませんでした。
そうなのです、雪女の彼女は、空を飛べないのですから。
猫の流れの中をあちらこちらと見回してみますと、流れの先頭辺りに、
色白の細い腕が浮き沈みしているのが見えたのでした。

(CMキャッチ)
「テンちぇるちゃん」「テンちぇるちゃ〜ん」「テンちぇるちゃぁ〜ん」
「ハァ〜イ、テテンチェルチェル、テテンチェル〜♪」

 なんとかお寺の大屋根の上に引き上げてもらった、小雪さんは、荒い息のまま
終わることなく地面を流れて行く、もふもふの群れを見ていました。
「もう、せっかくチコはんが知らせに来てくれやはったのに、ここ最近
なかったさかい、すっかり忘れておした。」
乱れた着物がちょっとセクシーとか思いながら、テンちぇるちゃんが尋ねます。
「あの猫は、なんなのですか。
ここでは、猫がああして湧くものなんですか?。」
屋根の端から、相変わらず流れ続けている猫の群れを見ていますと、
「うちもハッキリした事は知りおへん、ただ、春とか秋なんかに急に気温が
上がったりする事がありおすやろ、そんな時にどこからか猫はん達が湧いて
来やはるんおす。
反対に、猫が湧きはるし、気温が上がりおすんかも知れまへんけどなぁ。」
そんな小雪さんの説明の間も相変わらず流れ続けていた猫の動きが、心なしか
ゆっくりとなってきました。
「ほら、テンチェルはん、そろそろ始まりおすへ。」
彼女の言葉に従った訳でもないのでしょうけど、猫の群れが少しずつ影を
薄くし始めたのです。
それぞれの輪郭が曖昧になって行くと同時に、それらが一匹の巨大な猫となり、
動きを止め、そのまま大きな欠伸をして、町に伸しかかるように丸まって蹲ると、
気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らし始めたのでした。
その音はまるで、地鳴りのように辺りに響き渡りましたが、やがて猫の姿が
薄れ、空に溶けるように広がり消えて行くと同じに、どんどんと小さくなり、
やがて、その姿と共に、音も消えたのでした。
「あ〜、終わったみたいおすなぁ。」
空を見上げて呟いた小雪さんに、未だあれがなんなのかわかっていないテンちぇるちゃんが
再び尋ねたのです。
「で、結局あれはなんだったのですか。
ヨーロッパでもあんなの見た事も、聞いた事もないですよ。」
そんな彼女に
「う〜ん、ほんまになんなんかは、うちにもよう判りまへん。
でも、あれが起ったら、気温が普通より上がりおすって事は間違いおへん。
ただ、あれが起こる前には、何匹かの猫が元の飼い主の所に教えに来て
くれやはるんおす。
あのチコはんも、うちがお寺に来た時に居やはった猫はんなんおす。
えらい頭のいい猫はんやって、うちらの事、自分の子供ぐらいに思ってはったんと
違いおすやろか。」
クスリと笑いを浮かべ、彼女の話が続きました。
「亡くならはった時には、皆は猫又にならはるんやと思いましたんおすけど、
そのまま成仏しやはったんおす。
まぁ、その方が生きてはるうちに満足しやはったって事おすし、うちはええ事やと
思うんおすけどなぁ。
せやから、うちが思うんおすけど、気温とか関係なく、猫はんらが、
元の飼い主とか気になる相手の所に遭いに来やはるんが、本当の目的や
ないんおすやろか。」
まぁ、チコはんの場合は、うちを冷こい座布団かなんかと思うたはったんとも
思いおすんやけどなぁ。
懐かしそうに空を見上げた小雪さんの目には、まだまだ春の色を濃く残す
空の蒼さが映り込んでいましたとさ。

◎プロフィール
名前 : 邪祇(じゃぎ)
年齢 : 22歳(妖の年齢なんてよくわかりません)
性別 : 男性
種族 : 烏天狗
 高野の御山を根拠地とする高野党を名乗る天狗・烏天狗の一体で、
各地の御山に遠征している実戦部隊である警羅隊に所属し、実力者としての名前を
轟かせています。
また、高野仏拳と呼ばれる拳法の伝承者候補の一体でもあり、ストイックに
努力を続ける性格で、他の伝承者候補が居なければ、高野仏拳の相伝者は
彼であったろうと言われる実力者なのですが、なんの因果か他に三体の
天才と呼ばれる伝承者候補が居た事が、彼の不幸であったと言われています。
それぞれに血の繋がりはありませんが、候補となった順に「兄」となり、
義兄弟の関係となります。
長兄に「羅鳳(ラオウ)」、次兄に「屠鬼(トキ)」、そして末弟に「拳四郎(ケンシロウ)が
います。
この三体も、時代を分けて現れれば、それぞれに相伝者となったであろうと
言われる者達であり、三体が三体ともに天才と呼ばれる技量を持った物達だったのです。
そんな中で、邪祇の技量は三体に及ぶものではなく、彼の焦りと悔しさは
いかばかりのものであったか推し量れようと言うものでしょう。
特に、自分より後から入ってきた拳四郎に対しては、簡単に自分の技量を
越えられたため、二体の兄に対してよりも、より複雑な心境を持つ事となったのです。
これが、のちの「高野騒乱」と呼ばれる相伝者候補同士による、高野党を四分しての
内乱の遠因となったと考えられています。

第15話 お・し・ま・い・♪。
(2021.by HI)

◆◆◆

今回贈っていただいた2本立てのストーリー、後半はなんと、約1か月前の
天使の杖「新着情報・お知らせ」コーナーの何気ない一言を、
見事に物語にしてくださったものでした。
ぽとぽと落ちてきた暖色系のもふもふたちが口々に発した「ミャァ」の声に
一瞬「ええっ?この子たちはもしかして・・」
そう、それは春暖に感じた無数の猫さんたちでした。
その猫さんたちを連れてきてくれた?チコはんは、HIちゃんの顔馴染みだった
実在の猫物とのこと。
聡明で、雌猫だてらに鯔背な猫さんだったというチコはんにお会いできたことも
嬉しかったです。
ふと心に去来したイメージが命を受けて動き出し、
追憶の中の存在はいつも心に在り続ける。
それなら別れの言葉はなくていい・・。
ふわりと風に漂い消えていくタンポポの綿毛は
タネの坊やの大冒険。
春の別れは新たな物語のprologue。
何気に「赤い烏2号」の表現がツボにはまったジャギさんにも
いつかもふもふの成就する?日の訪れんことをお祈りします。
そのとき三郎くんが御山の長老さんたちから袋だたきに遭わないことも、
併せてお祈り・・ いえ、創造神のHIちゃんにお願いしておきます(笑い)。
さよならを言わずに過ぎていった春が優しい風をくれた今、
元気に新しい季節に向かおうと思います。
HIちゃん、ありがとうございます!

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