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こいは恋だょ テンちぇるちゃん♪


「テンちぇるちゃん」「テンちぇるちゃ〜ん」「テンちぇるちゃぁ〜ん」

「ハァ〜イ、テテンチェルチェル、テテンチェル〜♪」


春のうららかな一日、テンちぇるちゃんの周りには
草花が色とりどりに花開いています。
そのお花を摘んで、拾ってきたガラス瓶に挿しますと、それはもう立派な花瓶と
なるのです。
その中で花の色と葉の緑が見事なハーモニーを奏で、綺麗に磨き上げたガラスが
太陽の光を反射し、まるでお花達をスポットライトの中に立つ女優のように
輝かせてくれています。
花畑と言っていい叢の中で、角度を変えてはそれを眺めて楽しんでいた
彼女でしたが、気が付けばつい今しがたまで周囲を飛んでいたクマンばち(注1)の
羽音も聞こえなくなっていました。
「巣にでももどったのかしら?」と思った彼女でしたが、クマンバチだけではなく、
先ほどまであちらこちらから聞こえてきていた鳥の声はもちろん、小動物、
小さな虫達の立てる音さえ聞こえなくなっています。
心なしか、木々のざわめき、風さえもが、声を潜めたように、辺りは
すっかり静まり返っていたのです。
今更ながらにそれに気が付いたテンちぇるちゃんが、辺りを見回してみますと、
広場と森の境界辺りに、一人誰かが立っているのに気が付きました。
どうやら男性のようですが、その姿は、今では珍しいこの国の伝統衣装と思われる
ものを着ています。
それは、そう、あの古木の精霊さんが着ていた衣冠と呼ばれる衣装をさらに
グレードアップと申しましょうか、素人目に見ましても素材となるものから
縫製に至るまで、手のかけ方が尋常ではない事が判るほどの物でした。
さらに、その人物も、その衣装に負けないと言いますより、圧倒するだけの空気を
纏っているのです。
テンちぇるちゃんが、自分に気が付いた事を悟ったのでしょう、彼がゆっくりと
歩を進めましたが、それは歩くと言うより、地面を滑ると言った方が適切な
動きでありました。
やがて彼女の近くまでやってきた彼は、相変わらず花を挿したガラス瓶を
掲げたまま身動きせず彼を見ている彼女に
「うむ、名も無き野の花も、そのように生けてやれば、なかなかに風情を
醸し出すものであるな。」
その言葉が引き金となったのか、彼女はゆっくりと花を地面に置き、言ったのです。
「あの、どなた様でしたでしょうか?。」
彼の口許がピクリと引きつりました。
「うむ、やはり異国の者には判らぬか。」
と言うと、かれの肩、両手、膝が丸く膨らみ始めたのです。
そしてその膨らみは、彼の顔と同じ造作となり、最後に背中から伸びてきたのでありましょう、もう一つの頭の
計8つの顔が、彼女を見やったのです。
その姿は異様の一言に尽きるもので、天使をして
「・・・気持ちわる〜・・・っ。」
と言わしめたのでした。
今度は八つの口元がピクリと動きました。
「コホッ、まだ判らぬか。
まぁよい、異国の者という事に免じて、見逃してやろう。」
すると、その言葉が終わるが早いか、光の爆発が辺り一面を覆ったのです。
それを光と感じたのは、彼女がそう感じたと言うだけで、常識外れな力の
放出以外の何者でもありませんでした。
光が過ぎ去った後、ゆっくりと目を開いた彼女の前に、黒く鈍く光る壁が
そそり立っていたのです。
しかも、滑るように動いており、ズザザザと草を擦る音が絶え間なく聞こえ、
にわかに陽光を遮って、黒い影が落ちてきました。
恐る恐ると、そちらを見上げると、そこにははるか頭上にうごめく、8本の
蛇の頭があり、そのうちの一つ、冠をかぶったような頭が、巨大でなんの感情も
感じさせない爬虫類独特の丸い目玉で、彼女を見降ろしていたのです。
八岐大蛇(やまたのおろち)、それが彼の名でした。
テンちぇるちゃんの体が大きくのけ反っていきます。
あまりにも高い位置にある彼ら(と言っていいのでしょうか)を見るためには、
大きく見上げるしかありません。
そして、身体を反らせるように見上げた彼女の体は、ポテンと後ろに倒れ、
それっきり動かなくなってしまったのでした。
どうやら、見上げようとしていたのではなく、意識を飛ばされ、後ろに
引っくり返ってしまったようです。

 テンちぇるちゃんが目を覚ましますと、蒼く晴れ渡った爽やかな空が
広がる光景が目に飛び込んできました。
高い空を流れる白い雲が、のどかさを演出し、自分の下でやんわりと彼女の体を
受け止めてくれている草の感触が、彼女を再び眠りの中に誘おうとしてきます。
耳の辺りをこちょこちょとくすぐる草の一本が
「お寝坊さん、そろそろ起きてはいかがかしら?」
とやさしく起こしてくれているようです。
「う〜んっ・・・」
と大きく伸びをすると、身体の強張りが、一気に抜けていきます。
「はぁ〜。」と気の抜けた息を吐き、再び眠りに身を任せようとした彼女に、
少し離れた所から声がかけられました。
「異国の使いよ、コホッ、目覚めたか。」
いきなりの声に、驚いてそちらを見てみますと、そこにはこの国の
民族衣装なのでしょう、それも素人目に見ましても一流の素材を使い、一流の手で
縫いあげられた事が判る物を着、頭には円筒を左右から押し潰したような帽子を
被った男性が座っていたのです。
それも、その衣装に負けないと言いますより、圧倒する空気を纏った男性でした。
彼女は「どこかで会った事があったかしら?」と記憶を探ってみましたが、
どうも思い出せません。
「あの、どなた様でしたでしょうか?。」
彼女のその言葉を聞いて、ヒクリと口元を引きつらせましたが、
「記憶が飛んでいるようだな、今ここで姿を著せば同じ事となるであろうし、
いかがいたしたものか。」
なにか考えているのでありましょう、口許に手にした扇子を当て、中空を
見つめた彼は、徐に話し始めたのでした。
「先日、お主と一緒におった雪女が、我を呼び出した事を覚えておらぬか。
あの狐、九尾の狐と一緒におった時なのだがな。」
思い出したと言うより、忘れたくても忘れる事などできません。
小雪さんが奇声のおじさんに取り憑いてもらうために狐と蛇を呼んだ時に
なんの因果か、やってきたのが九美の狐と、八岐大蛇と言うこの島国でも屈指の
大妖だったのです。
はっと我に返ったテンちぇるちゃんは、白杖を手に構えると、一気に後方に飛び、
彼との間合いを取って身構えたのです。
「私になにかご用かしら、いかに力を持った怪物でも、ただでは
済まさないんだからっ!」
彼女の啖呵を聞いた八岐大蛇は、相変わらず扇子を口許にあてたまま、
「コホッ、そう早まるでない、戦いたいと申すのであらば、我は構わぬが、
お主に勝てる道理もなし、周囲をよく見てみるがよかろう。」
改めて彼女が周囲を見渡すと、薄らとした影ではありますが、森戸の境界辺りに、
先ほど現れた八岐大蛇の体が幾重にも重なるようにぐるりと周囲を囲んで
いたのです。
空を見上げてみれば、これも影としか見えませんが、七本の頭が鎌首を
持ち上げているのが見えたのです。
「安心いたせ、我は、そなたを どうこうする気はない。
ただ、問いたい事があるだけでな。」
それでも周囲をキョロキョロと見回してしまいましたが、力の差は歴然ですし、
この状況は、すでにどうにかできるものではない事は一目瞭然でした。
テンちぇるちゃんは、大きく息を吐き出し、身体から力を抜くと、
「なにか私に聞きたい事があるとの事ですが、何をお知りになりたいの
でしょうか。」
彼は、先ほどから正座で彼女に相対していましたので、テンちぇるちゃんも
その場に座ろうとしましたところ、彼の一喝が飛んできたのです。
「待てっ、そなた、今何をしようとしている。」
その声は、彼女の動きを止めるに十分な迫力を持ったものだったのです。
中途半端な姿勢で、動きを止めた彼女は、
「あの、八岐大蛇さんも正座をされておられますので、私も正座をした方が
よいかと思ったのですけど・・・。」
すると「ほぉ」と少し感心した表情となった彼は
「うむ、異国の者で、正座を知っていようとは、多少は見所がありそうではないか。
最近の若い妖の中には、正座すら知らぬ者もおると言うのに。
それに目上の者に合わせようとする気配りはなかなかのもの。
褒めてしんぜよう。」
うむうむと、なにか納得したように軽く頷くと、
「しかし、そのまま座って何とする。
いかに草の上とはいえ、座り心地も悪かろう。
なにより、衣の生地を傷めてしまうではないか。
これを使うがよい。」
彼が言い終わるが早いか、彼女の前に大き目のクッション、座布団が
現れたのです。
ただそれは、四隅に房のついた、金糸銀糸で緻密な模様が縫い込まれ、お寺で
見た物とは別物と思える代物でした。
思わず自分の着ている服と、座布団を見比べ
「あの、いいんですか、私の服より、この座布団の方が良い物に見えるのですが。」
「なに構わぬ、どのような座布団であれ、座る者が居てこその座布団と言う物。
誰も座らねば、それは既に座布団ではあるまいコホッ。」
それでも、ちょっと気が引けてしまう彼女でしたが、その上に足を乗せた瞬間、
肌に触れる生地の心地よさ、ふんわりと柔らかすぎず、堅すぎず体重を
支えてくれるその弾力、
「はう「
と思わず吐息が漏れてしまいました。
もし彼女が猫であったなら、間違いなく、この座布団の上で丸くなり、ゴロゴロと
ノドを鳴らしていた事でありましょう。
ちょっと別世界に行きかけていた彼女を引き戻したのは、目の前で可笑し気に
眺めていた八岐大蛇でした。
「使いよ、気に行ってもらえたようで嬉しいのだが、そろそろ話を
させてもらってもよいかな。」
笑いを含んだ声に、ハッと我に返ったテンちぇるちゃんは、姿勢を正すと
「すっすいません、とても座り心地がよかったもので。
で、私にお聞きになりたい事とは何でしょう。」
どうやら彼に敵意や何かを企んでいる気がないと確信が持てたのでしょう、
いつもの調子に戻った彼女でした。
彼の方はと言えば、自分から振ったにも関わらず、口許を扇子で叩き、
なにやら言いだすのを躊躇しているようです。
が、いつまでもそうしている訳にはいかないと決心したのでありましょう、
ややもすると、重くなってしまいそうな口を開いたのでした。
「うむ、我には、我を奉じる者どもがおるのだが、答えによっては、その者達に
知られる訳にもいかぬでな。
異国のそなたであれば、なんの柵(しがらみ)もないであろうと、
まかり越した次第。」
なにやら勿体ぶった言い方でしたが、彼の話はこれからが本番でした。
「実はな、あの雪女が我を呼んだ時より、なんと説明すればよいのか、
こう、なんというか、胸の鼓動が高鳴り、全身が熱く火照ってしまってな。
なにやらもやもやしたと言うか、落ち着かない心持となる。」
長い歳月を生きてきたが、このような事になるのは初めてのことでな。
いったい、これはどういう事であろうかと、他の頭 共々に首を捻っておると
言う訳なのだがな、なにか判らぬか。
どうにも気になって、眠ることすらできぬ。」
ほとほと困ったように、話し終えた彼を、テンちぇるちゃんは、両手を
顎の下辺りで組み合わせ、キラキラと輝く目で見つめてきたのです。
「判ります、判ります、それは間違いありませんっ。
八岐大蛇さんは、病にかかられているのです、恋と言う病に。
断言します、間違いありません。」
その食いつきそうなテンちぇるちゃんの様子に、ちょっと引いてしまった
八岐大蛇でしたが、女の子は恋話が甘いデザートよりも大好きなのですから
仕方がありませんよね。
「こい?、こいとは、川や池にいるあの魚の事か?。」
もちろんこの程度の事で、恋話に食いついた女の子が引くわけがありません。
「違います、恋は、そう、Loveです、i love you♪のラブ、
愛なのです。
感情を手に入れた者だけが、受け取る事ができる、素晴らしい病、それが
恋なのです。
八岐大蛇さんは、その素晴らしい恋に陥られたのです♪。」
眼のキラキラの輝きを増しながら、彼の様子など構わずグイグイと押し込んで
いくのです。
女の子がこうなってしまっては、男の子に対抗する術などありはしません。
それは、数多の敵を葬り、この地に君臨してきた彼をして、得体の知れない恐怖を
感じさせられた瞬間でありました。
かつて、七つの首を落とされるに至った速須佐之男(スサノオ)(注2)との死闘でも、
これほど一方的に攻められた事は、無かったと断言できます。
「うむ・・・、で、その恋とはなにか。
お前達が病と呼ぶものなのか。
我は、これまで病、毒と言った物には冒されたことはないでな。
病をもたらそうとする者がおらなかった訳ではないが、全て我の胃の腑に
収まるか、消し炭とし滅ぼしてやったわ。」
なにやら不穏な言動が混ざっていますが、テンちぇるちゃんはそんな事
気にした様子もなく、キラキラお目々のフルパワーで輝かせています。
「はい、病とも言われていますが、それはアスクレピオス様(注3)でも、
ルルドの泉(注4)でも治す事はできないと言われているのです。
でも安心してください、私は、それを治す方法を知っています。」
彼にはその単語は判りませんでしたが、その恋と言う病が、ただならぬ
ものである事は判りました。
「うむ、なにやら恐ろしげなものであるようであるが、どうすればよい。」
その言葉を聞いたテンちぇるちゃんのキラキラが目から溢れだし、満面の
笑みとなって(好奇心最大出力120%)辺り一面を輝きで満たしました。
そして、十分なタメを作った後、一気に行ったのです。
「はい、その御相手に気持ちを打ち明けるのです、それしか治す方法は
ありませんっ!♪。」
今、八岐大蛇は、彼女の背後に100万ボルトの雷光を見たのでありました。

(CMキャッチ)
「テンちぇるちゃん」「テンちぇるちゃ〜ん」「テンちぇるちゃぁ〜ん」
「ハァ〜イ、テテンチェルチェル、テテンチェル〜♪」

「では、最近好感を持たれた方はおられないと。」
「うむ、我はこの世に生じてより個にして全、全にして個となる存在でな、
そなた達のように、同族と言う者はおらぬコホッ。
強いて言うのであれば、大蛇と呼ばれる者が近いのかも知れぬが、そなたが
『人や鳥と同族』とされるのと同じではないかな。
単に似ているだけと思うのではあるまいか。」
どうやら、この八岐大蛇さんには、同族と言われる方はいないようで、
まさに種族的に天涯孤独を行かれる究極の単一種族だそうなのです。
「うむ〜。」
と、顎先にパイプを持った手を当てて、考え込むテンちぇるちゃんでしたが、
なぜに三つ揃いのスーツにインバネスコート(注5)、頭には鹿打ち帽(注6)、
右手に虫眼鏡、左手にパイプはなんなのでしょう。
ちなみにパイプの中には火種の付いた煙草の葉どころか何も入っては
いませんでした。
「すると、八岐さんには、これと言った心当たりはないと言うことですね。」
ビシッとパイプごと指を突き付けた彼女は、まるで某探偵のようでしたが、
名はとりあえず外しておきましょう。
「だとすれば、やはりあの小雪さんの呼びかけに応じられた時が一番可能性が高いという事ですね。
ワトソン君(注7)はどう思うかね。」
横を向いて問いかけた彼女に、そこに誰かいるのかと見てみた彼でしたが、
彼には何も見る事はできませんでした。
よもや我に気付かれることなく、気配を消している者がいるのか、
この異国の使いは本来の力を隠しているのではないのかと、少々居心地が
悪くなってしまいます。
「うむ〜、小雪さんの線はありませんか。
呼びだされた者に対して、なにかこう好意を持つようになっていますとか、
実は昔から小雪さんが好きで、気持ちを打ち明けるチャンスを狙っていたとか。」
しかし、彼の反応はあまり芳しいものではありません。
「むむ、あの雪女か。
確かに召喚術の中には、術者に対して好意を持つよう仕向けられるものも
あるが、そのような術であれば、召喚された瞬間に、術者を喰ろうてやるがな。
我にそのような術が効くはずもなかろう。
それに、その小雪と言う雪女、ハッキリと言えば、白かったと言う程度にしか
覚えてはおらぬ。
呼びだされてやったのも、単に近くにおったのと、あやつが・・・、
いや関係ないコホッコホッ。」
なにか言い淀んで軽い咳払いをした彼の顔が、心なしか赤らんだような
気がしました。
もちろん、恋話マスターの彼女がそんなまさに突っ込んでくださいと
言っているのも同じ状態を見逃す事があるでしょうか、そうありはしないのです。
彼女の笑みが益々と深まっていきます。
グィ〜と下から捻じ込むように顔を近づけた彼女は、
「あやつって誰ですかぁ、ねえねえ、あやつって誰なんですかぁ♪。」
そこでハッと気が付きました。
あの時、傍にいた者と言えば、それを考えた時、彼女の顔から一気に
色が抜け落ち、両手で肩を抱くようにしながら、彼から数歩も間を開けて
しまったのです。
「あの、まさか、あの時いた方と言えば・・・。」
さすがの彼女も言い淀んでしまいましたが、これを言わなければ先に進む事は
できません。
彼女の喉が大きく上下し、十分な、十分すぎる時間を開けて、その名を
口にしたのです。
「奇声のおじさん・・・。」
二体が頬笑みを浮かべ、手を繋ぎ幸せそうに見つめ合う姿を想像し、彼女は
身体をぶるっと震わせ、総身に粟が立ってしまいました。
「そなた、なにやらわからぬが、物凄く失礼な事を考えてはおらぬか。
まず間違いなく間違っていると思うぞ。」
「そうですよねぇ〜。」
悪びれる事無く、その想像を頭から弾き飛ばした彼女は、
再び背筋を伸ばし、パイプから煙を一息吸う真似をすると、ビシッと
音がしそうな勢いで、彼を指差したのです。
「判りました、八岐大蛇さんの恋のお相手は」

(CMキャッチ)
「テンちぇるちゃん」「テンちぇるちゃ〜ん」「テンちぇるちゃぁ〜ん」
「ハァ〜イ、テテンチェルチェル、テテンチェル〜♪」

 なにやら部屋の外が俄に騒がしさを増したと思えば、重厚な扉を突き破る勢いで
燕尾服の男が文字通り飛びこんできたのです。
その燕尾服は、床を二度三度と転がったかと思えば、四足となり
狐頭の、牙を剥き出しにし、扉の先に向かって威嚇の唸りを上げたのです。
同時に、扉から数人の黒服達が入ってきたかと思えば、その後ろから身体を
二つ折りにした黒服が吹き飛んできたではないですか。。
燕尾服が部屋の主に向かって叫びます、
「九尾様、お逃げください、ここは我らで押しとどめます。
早く奥のお部屋から外へっ!。」
他の黒服達も、もはや姿を返る事など厭わず、四足となり牙を剥き出しにし、
未だに扉の外にいる者に向かって威嚇の声を上げてはいるものの、それは
怯えの混ざった唸りでしかなかったのです。
きっと、外の者が近づいてきているのでしょう、唸りを上げる狐達全員が
息を合わせたように後ずさっていきます。
そしてようやくと、部屋の主でもある女性が、手にしていたワイングラスを
テーブルに置くと、ソファーから腰を上げたのでありました。
「六尾や、いつから わらわに命令できるほどに偉くなったのかえ。」
それは、なんの変哲もない静かな問いかけでありましたが、その声を聞いた
六尾と呼ばれた燕尾服の狐は、扉の向こうを気にしつつも、彼女からの
圧倒的な威圧に抗する術も無く、その場に伏せるしかなかったのです。
「もっ申し訳ありません、しかし、今そこにいる者は、このような場所で
迎え撃たれますには・・・。」
彼女の目が一段と冷ややかさを増しました。
「誰に向かって言っていると聞いておる、お前の主が誰かと言う事を
忘れたのかへ。」
さらに身を低くした六尾が、扉の向こうを気にしつつも、
「いえ、九尾様に命令などと、しかし、今外におります者は。」
彼の言葉が終わる前に、扉を閉めようとしていた黒服狐達を巻き込んで、扉が
吹き飛んだのでした。
もはや、形振り構わず六尾が、その牙と爪を剥き出しにし、入口に向かって
飛びかかって行ったのですが、「ギャンッ!」と悲鳴ともつかぬ声を上げ、
壁に叩きつけられ動かなくなってしまったのです。
そして、その扉の無くなった入口から入ってきたのは、束帯(注8)と呼ばれる衣装を
身に纏った男だったのです。
その後ろからは、オロオロとした、もうどうしていいか判らないと言った様子の
見習い天使が、続けて入ってきたのでした。
九尾の目がさらに冷ややかさを増しました。
「誰かと思えば八岐ではないか。
主はもっと道理を弁えておると思っておったぞえ。
そこの欧州の使いの力を使えば、わらわを滅ぼせるなどと考えたのであれば、
もはや容赦はせぬっ。」
部屋の空気を一瞬で塗り替え、彼女の全身からそれまでに倍する威圧が溢れ、
鼻の頭にシワを寄せ、鋭い牙を剥き出しにすると、腰の辺りから黄金色の
九つの尻尾が大きく広がったのです。
それを見た八岐大蛇も
「くっくっくっ、面白い。
我の行く道を妨げると言うのであれば、辺りに散らばっておる狐共と同じに
薙ぎ払うのみ。
汝との因縁を、ここで終わらせるのも一興であるな。」
こちらも九尾の狐に劣らぬ威圧を発し、肩、手、膝、背中から7つの頭を
擡げたのでありました。
もはや一触即発な状況に、腰が抜けそうになりながらも、恋愛マスターの誇りに
かけてって、いつから恋愛マスターになったのですか、テンちぇるちゃん・・・、
二体の前に躍り出たのです。
「お願い、私のために争わないでっ。」
辺りを静寂が支配しました。
とりあえず両者の動きを止めるのには成功したようですが、この
女の子が一度は言ってみたいセリフは、用法・用量を守って
使わないといけません。
9対の眼に冷静に見つめられる彼女の顔が、みるみる赤く染まっていきました。

「で、お主達が、わらわの屋敷に来たのは、そやつの病を治すためだと
言うのかえ?。」
辺りを二尾や三尾の狐達が片づけている部屋の隅で、三体がテーブルを挟んで
座っています。
「他のお部屋に」と言う目覚めた六尾の言葉には、
「招きもせぬこのような族(やから)など、壊れた部屋で十分じゃ。」
と一刀両断され、飲み物も彼女の前にしか用意されませんでした。
が、どこから出したのか、茶道具一式が並び、シャカシャカと八岐の
慣れた手つきで立てられたお抹茶が、彼とテンちぇるちゃんの前に置かれます。
ヒクリと頬を引きつらせた九尾が、改めて尋ね返してきました。
「で、この八岐が病に冒されたと言うのかへ。」
「うむ、我にも信じられぬが、どうやらそういう事らしい。
この者がそう断じておる。」
隣のテンちぇるちゃんに目を向けると、彼女は再び輝きを増した瞳から星を
溢れさせ、手を組み合わせると、九尾を見つめ言ったのでした。
そうなのです、八岐大蛇さんは、恋をされてしまったのです。」
「こい?、あの川や池にいるアレの事かえ。」
冷静にテンちぇるちゃんは返します。
「、そのネタは、もう使いました。」
九尾の舌打ちが響きます。
「あの、奇声のおじさんにお二方で取り憑かれました時以来、鼓動が速くなり、
身体が熱く、居ても立ってもいられなく、夜も眠れない状態となって
おられるのです。
ご自身はこれまで恋をされた事がなく、気付かれていなかったようなのですが、
数限りない恋話を聞いてきた、恋愛マスターの私には判ったのです。
八岐大蛇さんは初めての恋に落ちられていると。
そして、そのお相手は、そう、九尾さん、貴女だったのですっ!。」
インバネスを跳ね上げ、ビシっとパイプを持った手で、九尾を指差した
テンちぇるちゃんでしたが、彼女の指摘に
「あっはっはっはっはっはっはっ、笑わせてくれる、こ奴がわらわに恋じゃと。
こ奴とはさんざんと殺し合った仲ぞえ。
何度こ奴に腸を抉られ、何度こ奴の頭を吹き飛ばしてやった事か。
そいつが恋じゃとは、文字通り片腹痛いわ。」
指差したままの手のやり場に困ったテンちぇるちゃんでしたが、
「あの、お互いに腸(はらわた)まで見せ合う事で、愛が芽生えたとかって事は
ありませんかね・・・。」
「あるか、そんなものっ!。」
一刀両断でした。
「そうですよねぇ〜。」
しょぼんとした様子で、手を下したテンちぇるちゃんを他所に、九尾の視線が
八岐で止まり、彼の姿をまじまじと見始めたのです。
そして、そのままソファーから身を起こすと、まさに互いの顔が
くっつかんばかりにまで近付くと、ヒクヒクッと鼻を動かし、彼の匂いを
嗅ぎ始めたではないですか。
その突飛な行動にも、八岐大蛇は気にもしてはいないようですが、
テンちぇるちゃんは「これは、新しい愛の形なのかしら」と思いつつも
ちょっとどん引きです。
さんざん彼の身体を嗅ぎまわった彼女は、やっと顔を離し尋ねました。
「そなた、何を憑けておる?。」
そう言われた彼は、腕の匂いを嗅いでみて
「香は焚き込んでおるが、臭いか。」
たしかに香と呼ばれる、この地域独特の香りがしていますが、柔らかい香りで
テンちぇるちゃんには「気にするような匂いなのかな」と不思議でした。
ですが、九尾の問いはそういう事ではなかったようです。
「気付いておらぬのか。
ふむ、この辺りじゃな。」
と言うが早いか、振りかぶった右手で八岐の左胸を貫いたではないですか。
「ヒッ!」
テンちぇるちゃんの驚きの声が漏れましたが、当の本人達は何事もなかったような
顔をしています。
よくよく見てみれば、九尾の手は、八岐の胸の寸前で断ち消えており寸分も
彼の身体には触れてはいません。
が、彼女の手はまさに断ち切られたように、肘から先が無くなっているのです。
いえ、それどころか、さらに腕が先に進んでいるようで、もう九尾の肩まで
消えており、いまにも二体の身体がくっつきそうになっているのです。
どうやら消えた腕の先で、なにかを探しているようでしたが、いきなりその腕が
引き抜かれると同時に、それまで消えていた腕が元のように現れ、さらに
その手には、それまで無かった何かが掴まれていたのです。
引き抜いた勢いのまま、後ろに放り投げられたそれは、片づけをしていた
狐達を巻き込んですっ飛んでいきましたが、床にぶつかると見事な受け身をみせ、
まるで映像が逆再生されるように、腕を組んで立ちあがったのでありました。
その姿は、短く刈り込まれた角刈りの頭に鉢巻きを巻き、素肌に直接法被を着た
褌姿の変態・・・、いえ、男性でした。
「わっはっはっはっ、さすがは悪名高き九尾の狐。
よもや見抜かれるとは思いもしなかったでごわす。」
悪びれる様子もなく、高笑いする男に、呆気に取られた
テンちぇるちゃんでしたが、その顔を思い出したのでありましょう、思わず叫んで
しまいました。
「えっ、あのお正月にお会いした厄病神様ですよね。」
こちらも彼女に気が付いた厄病神が、
「これはこれは、女神様ではござらぬか、このようなところでお会いするとは
奇遇でごわすな。
と云いたいところでごわすが、困りますな、八岐大蛇と九尾の狐を
くっつけようなどと、この国を滅ぼすつもりでごわすかな。」
「あっ、いえ、そんなつもりでは・・・。」
慌てて否定しようとした彼女に、
「冗談でごわす、よもや天地が引っくり返ろうと、こやつらが手を取り合うことなど
ありもうさぬ事でごわす、わっはっはっはっ。」
「はん、たかが厄病神風情が何をほざいておるのかへ。
にしても、お主程度の者が、よくも八岐に取り憑けたものよ。」
九尾の言葉に、笑いを消した厄病神は、ポリポリと頬を掻くと
「ふっふっふっ、ワシとて神の一柱、その程度容易き事でごわす。
と言いたいところでごわすが、そうなのでごわす。
実は、本来は別の者に憑くつもりでおったところ、たまたま八岐とそなたが居る所に
出くわしましてな、そうそう女神様と雪女も居った時でごわす。
それだけなら、別にどうすると言う事もなかったのでごわすが、なんと、
その八岐大蛇の心に隙があるではごわさぬか。
まぁ、こんな幸運もこれからありますまいと、これ幸いと、憑かせてもらったと
いう訳でごわす。
我らの厄神業界でも、八岐大蛇に憑き、その力を削いだとなれば一目置かれると
言うものでごわすが、あれだけ全力で健康運を奪ってやったと言うのに、
風邪の初期症状しか起こさぬと言うのには、参りましたぞ。」
動機、発熱、そして、時おり「コホ」と咳払いされていましたのは、風邪症状の咳。
それに気が付いたテンちぇるちゃんは、がっくりと肩を落としてしまいました。
服装もスーツとインバネス、鹿打ち帽からいつもの服装に戻っています。
もちろん、手にしているのは虫眼鏡とパイプから白杖になっている事は
言うまでもないですよね。
どちらかと言えば、この着替えをどうやっているのかの方が、気になりませんか。
「しかし、妖に取り憑く神と言うのは・・・、世も末ぞえ。」
「わっはっはっはっ、我ら神々の世界にもいろいろと事情がありごわしてな・・・。」
厄病神の言葉は途中で遮られました。
彼のいた場所に黒い柱が突き刺さったのです。
それは柱ではなく、八岐大蛇の頭となった左手が伸び、彼に襲いかかった
瞬間でした。
軽やかに、ですが、笑いを引っ込め、真剣な面持ちとなった厄病神が塵の
舞い上がる床に降り立ちました。
が、次々と彼を狙って大蛇の頭が襲いかかっていきます。
「これはたまらんでごわす。」
軽やかに避けつつも、少しずつ追い込まれていく彼でしたが、
「女神様とはもっと話をしていきたいところでごわすが、見ての通り命に関わる
状況でごわす。
いずれ、どこかでお会いできますのを楽しみにしていますでごわす。
では、皆の衆、ごっちゃんでごわした。」
と言うが早いか、その姿を虚空に消したのでありました。
厄病神の消えた後には、巻き込まれ辺りに倒れ伏す狐達と、床と言わず壁と言わず
破壊されつくした部屋と、舞い上がった埃、埃、埃。
「全く、泰山鳴動して鼠一匹・・・とはこの事ではないかえ。
もうよい、六尾よ、わらわは今宵は別邸にて休むよって、。後の始末は
任せるぞえ。
こめかみを軽く押さえながら、席を外そうとした九尾でしたが、思い出したように振り返ると、
「修理代は、そこの八岐の所に請求しておけ。
思いっきりふんだくってやるがよいわ。」
頭や腕に応急処置としての包帯を巻いた六尾は、直立姿勢のまま、埃を被った
身体を、静かに折るのでありました。
テンちぇるちゃんは、
「どこの世界も、使われる立場って大変なんですね。」
と、ちょっと同情めいた気持になったようです。

 そして、後日。
彼女の元に、八岐大蛇から丁寧な礼状を添えた、もはや値を付けること自体が
畏れ多い、十二単(じゅうにひとえ)(注9)とその付属品の数々が送られて
きたのですが、手紙の最後に
「我の心の臓の高鳴りはいつ治まるのであろうか」
と書かれており、ついつい頭を抱えてしまったテンちぇるちゃんなのでしたとさ。

◎注釈
○注1、クマンバチ : マルハナバチの別称。
 黒く大きな丸いお尻に、黄色の胸を持った蜂の一種でありますが、
(スズメバチやミツバチのように人を挿す事はない大人しい蜂です。
木に穴を開け、そこに巣作りをする蜂で、胸の黄色とお尻の黒色のコントラストが
まるで黄色いチョッキを着ているように見える所が可愛いです。。
ただ、刺される事はないと判っていても、巣に近づくと目の前でユラユラと
ホバーリングをされたり、羽ばたきの風が判るほど近くを飛んで威嚇されると、
ちょっと怖かったりいたします。
○注2、速須佐之男(すさのお) : 
神話の時代の神の一柱。
天照大神の弟であり、高天原に行った時に、スサノオが大暴れをしたため、
天照が天岩戸に籠り、太陽が消えると言う事態を引き起こしたため、高天原を
追放されました。
その後、八岐大蛇を退治する英雄譚は、我が国では知らぬ者のいない話として
語り継がれています。
「古事記」や「日本書紀」「出雲国風土記」等にその名前や逸話を見る事ができますが、
それぞれで使われている漢字が違っていたりしますが、古事記の「建速須佐之男命
(たけはやすさのおのみこと」を覗き「スサノオ」と読まれ、この後ろに
「命」もしくは「尊」が付けられます。
○注3、アスクレピオス(Aesculapius) : ラテン語ではアイスクラーピウスとも
呼ばれる。
ギリシャ神話では、その卓越した医術を持って、死者をも復活させたと
言われています。
しかし、自らの支配下の死者を次々と生き返らせられたハデスから激しく
抗議を受けたゼウスは、人間が医術で互いに助け合う事に不満を持っていたため
、雷を落とし、彼を殺したのでした。
彼は、その後、その功績を認められ、天に上げられ蛇使い座となり、神と
なったのです。
who(世界保健機構)の蛇の絡みついた杖のマークは、彼の使っていた杖を
衣裳したものだそうです。
ちなみに、アスクレピウスは、アポロンの息子の一人だったりします。
○注4、ルルドの泉 : 
 フランスのスペインにほど近い、ピレネー山脈の麓の川縁にルルドと言う町が
あります。
1854年、町の貧しい少女ベルナデッタが、ルルドの近くの洞窟付近で女性に
声をかけられ言われる通りに土を掘ると、そこから水が湧きだしたのがルルドの泉の始まりと
言われています。
この声をかけた女性は、後に聖母マリアと認められ、この泉の水を飲んだり、
沐浴をした病人の病気が完治するという奇跡が報告されるようになり、現在では
世界中から多くの患者がこの泉を訪れ、またカトリック最大の巡礼地と
なっています。
○注5、インバネスコート(Inverness coat) : ロングコートにケープを付けた
タイプのコート。
スコットランドのインヴァネス地方が発祥の地と言われているため、この名が
付きました。
日本では主に男性の和装用コートとして用いられ、「二重回し」「二重マント」
「とんび」などとも呼ばれています。
もちろん、名探偵シャーロック・ホームズ愛用のコートです。
注6、鹿打ち帽(鹿追帽、ディアストーカー・ハット/deerstalker hat) : 帽子の前後に
庇の付いた帽子ですが、本来は全周に庇の付いた帽子で、耳当てを付けるために
左右部分の庇をカットするというデザインになりました。
ですから、ディアストーカー・キャップではなく、ディアストーカー・ハットと
呼ばれます。
通常は耳当てを帽子の横に上げてありますが、耳当てを使う時は下に降ろし、
顎で紐を結んで使います。
名探偵シャーロック・ホームズ愛用の帽子であるため、
シャーロックホームズ・ハット(Sherlock Holmes hat)とも呼ばれています。
○注7、ワトソン君 : ジョン・H・ワトスン(John H. Watson)。
名探偵シャーロック・ホームズの相棒にして助手。
ホームズをして、「女性は君の領分だ」と言わせるほど女好きとされていますが、
女性との話は、小説中ではほとんど出てきません。
軍医から開業医となり、ホームズと同居生活を始めるに至り、ホームズの
探偵としての仕事を手伝うようになり、ホームズ小説以後の、助手的立場を
表す代名詞として使われるようになりました。
ホームズの伝記小説は彼の手によって書かれており、小説の語り部は彼自身と
なっています。
ただし、事件を描くには、ホームズの了承が必要となるため、しばしば
「この事件は、君の作風には合わない」と描けない事件もあったようです。
また、映画化された時や、漫画、二次小説などでは、しばしば少年や女性として
描かれる事もあります。
○注8、束帯 : 束帯の構成は下から、単(ひとえ)・袙(あこめ)・下襲
(したがさね)・半臂(はんぴ)・袍(ほう)を着用し、袍の上から腰の部位に
革製のベルトである石帯(せきたい)を当てます。
 袴は大口袴・表袴の2種類あり、大口を履き、その上に表袴を重ねて履きます。
冠を被り、足には襪(しとうず)を履き、帖紙(たとう)と檜扇(ひおうぎ)を
懐中し、笏(しゃく)を持ちました。
公卿、殿上人は魚袋(ぎょたい)と呼ばれる装飾物を腰に提げました。
 なお、束帯には文官・武官による区別があり、文官と三位以上の武官は、
縫腋袍(ほうえきほう)を用い、冠は垂纓とされました。
四位以下の武官は、闕腋袍(けってきほう)を用い、冠は巻纓とされています。
さらに、武官・中務省の官人、勅許を得た参議以上の文官は、大刀を佩用します。
その場合、大刀は平緒(ひらお)で括り、腰に結びつけました。
 下襲の後ろ身頃(背部)は長くできており、着用時は長く尾を引くように
引き擦り、この部位を「裾(きょ)」と呼んで、束帯姿の大きな特徴となって
います。
また、裾の長さによって身分が表されるようになると、下襲自体が長大に
なった為、下襲と裾が分離するようになりました(別裾)。
その場合、下襲を着た後に腰に裾を当て、裾から伸びる帯を前に回して
結びつけたそうです。
しかしながら、天皇と皇太子が着用されるものに関しては下襲と裾が続くものと
されています。
また、纔著(さいじゃく)と言われる丈の短い裾もあり、地下官人の束帯に用いられました。
衣冠は本来、宮中に於ける宿直用の装束(とのいぎぬ)でありましたが、
宮中での勤務服として定着する一方、束帯は儀式に用いる儀礼的な服となったため
両者をまとめて「衣冠束帯」とも呼んでいます。
*参照、「束帯 - Wikipedia」
なんとなくしか着用時の格好が判りません:笑:。
また、とあるサイトでは、公的な場で着る物と、私的な場で着る束帯があり、
公的な場では色などが厳密に定められていましたが、私的な場では好みの色を
用いたとありました。
冠は、これも公的な場で被り、私的な場では烏帽子を被るとありましたので、
本策では、この設定を使っています。
とりあえず、束帯につきましては、よく判っていませんので、詳しく知って
おられる方がおられましたらご教授をお願いいたします。
○注9、十二単(じゅうにひとえ) : 十二単、または十二単衣は、平安時代後期に
成立した公家女子の正装です。
十二単という名称は、文献上女房装束(にょうぼうしょうぞく)、裳唐衣
(もからぎぬ)等と呼ばれていた装束の後世の俗称です。
五衣唐衣裳(いつつぎぬからぎぬも)とも呼ばれています。
五衣・唐衣・裳という名称は、「袴・単・五衣・打衣・表着・唐衣・裳」から
構成されていることに由来しているそうです。
十二単は20キログラム程もあり、四季に応じた名称の「かさね」を用いました。
また、宮中では女性の「束帯」に当たる装束として「物具装束」が平安後期まで
存在していましたが、女性が公儀の場に出るのを嫌う風潮もあり、
着用される機会が減り廃れたそうです。
 十二単の構成は、上衣から次の通りです。
唐衣(からぎぬ):裳と共に装束の最上層。
背子の変化したもので、短い袖があります。
裳(も):表衣の上から腰の後ろ半身のみを覆っています。
平安時代前期までは巻きスカートのように着用されましたが、重ね着により
このような着用方法が不可能となったため、現在の形となったそうです。
十二単の構成としましては。
 表衣(うわぎ):裳の内側の最上層。
 打衣(うちぎぬ):砧(きぬた)で打って艶出しをすることからこの名があり、
表衣の下に着ます。
 袿(うちき):打衣の下に数枚重ねます。
最盛期には十数枚重ね着されましたが、平安時代末期から5枚に落ち着きました。
 長袴(ながばかま):裳の退化による前の開きを覆うために着られました。
着用者の年齢によって色を異にするそうです。
 単衣(ひとえ):装束の肌着にあたります。
*参照、「十二単 - Wikipedia」
こちらもなんとなくでしか想像できませんが、きっと百人一首の清少納言さんや
紫式部さんなどの図柄を思い浮かべてみられますと、だいたいそんな物では
ありませんかと思いますぅ。
こちらも詳しく知っておられます方がおられましたら、ご教授をお願い
いたします。

第16話 お・し・ま・い・♪。
(2021.6 by HI)

◆◆◆

今回のお話のタイトルに、そういえば去年は鯉幟父さんのお話があったなあと
1年前が思い起こされました。
でも今年のこいは「恋」。
それをふたり(?)の大物キャラにぼけさせるのがなんとも楽しい。
珍しいテンちぇるちゃんのコスプレ姿は想像するだにキュートで、
見えないながら心の目も愉しむのを感じます。
そして解決したかに思われた謎が一瞬にして振り出しに戻るラストに
極上の推理小説を読み終えたような読後感が残りました。
世に恐れられる大蛇の親分も、恋の前にはまるで無力な少年。
コメディタッチな推理小説だけど、BGMにはなぜかJAZZが似合うような
深い余韻の正体は、きっといつも人生と隣り合わせの解けない謎。

HIちゃん、いつも素敵なストーリー、本当にありがとうございます。

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