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番外編第5話

お友達だょ 九尾さん♪


「テンちぇるちゃん」「テンちぇるちゃ~ん」「テンちぇるちゃぁ~ん」

「ハァ~イ、テテンチェルチェル、テテンチェル~♪」

 山寺の階段の下に、黒塗りの高級車が、静かに停車しました。
運転席、助手席、左後ろのドアが開き、見るからに仕立ての良い黒服の男たちが
流れるような動作で外に出ると、左後方のドアの前に並びます。
「会長、到着いたしました。」
恭しく頭を下げる中、ゆっくりと降りてきたのは一人の女性です。
彼女は並ぶ男たちに僅かに視線を飛ばし、
「後は一人で行くし、あんたらはどこか 人目につかへん所で待っとき。」
そう言うと、柄の長い小さなパラソルをさし、ハンドバックを片手に
山に続く粗末な石段に足をかけたのでありました。
彼女は白いフリルの付いたブラウスに、足首まで隠れる黒いロングスカート、
同色系の大きなリボンを腰で結び、両手は薄手の白い手袋を嵌めていますが、
彼女を特徴づけているのは、真っ白に塗られた顔に、真っ赤な唇、目の周りの
隈どりかとも見えるアイラインとシャドウ、マスカラ、そして輝くオレンジ色の
髪なのでした。
年齢はその化粧のためもあってか、若いようにも相応のようにも見え、
なんとも検討の付け難いものでありました。
パラソルを小刻みにクルクルと回し、どこか懐かしそうに周囲を見渡すその表情は
車を降りた時の険しいものではなく、自然と口元がゆるんでしまったような、
笑顔となっていました。
彼女の脳裏を過るのは、あの男と初めて出会った時の事。
もう百と十を五つも数える年ぐらいにはなるでしょうか。
あの時の事は、今思い返してもつくづくも情けない事態に陥ってしまった
出来事だったのです。
とにかく金(Gold)の輝きが大好きな彼女は、集めた金を自身の炎で溶かし、
その中に浸って陶酔すると言う遊びを好んでいたのです。
あの時も、そんな中で、夜空を見上げながらついついウトウトトしてしまい、
寒さから目を覚ますと、溶けていた金はすっかり冷えて固まっていたのです。
普段なら例えそうなったとしても、自身で炎を浴びせ続けていれば、たやすく
金を溶かし、脱出することなど容易な事だったのですが、その時は姿勢が
悪かったと言うしかなかったのです。
なまじ夜空を見上げていた為に、後頭部まで金の中に埋まっており、顔が空を
向いたままどうにも動かせなくなっていたのです。
炎を吹き付けても、空に火柱が立つだけで、金が溶けだす事はありませんでした。
 そのまま、どのぐらいの時が経ったでしょう。
太陽が昇り、空を紅く染め、月が昇り、空が白み始める事を何度見た事でしょう。
このまま居ても、別段死ぬ事もないですが、どうにも退屈で仕方がありません。
本来なら眷属の者達に命じるか、恥を忍んで稲荷にでも頼めば、すぐにでも
抜け出す事もできようものなのですが、なにせ金に埋もれているのが
なんとも面倒な事態を引き起こしているのです。
金と言えば、人の間では立場や地位が高くなればなるほど多くの金を
集めようとするもの。
確かに人ならずとも、その曇る事のない輝きには興味を引き立てる妖しい魅力が
あるものです。
金にはそれだけでなく呪術や妖術と言った陰の力を打ち消す力があるのです。
金の持つ輝きとは、元来 太陽の輝きと称され、太陽の輝きとはまさに
陽の力に他ならないものなのです。
そんな力が傍にあると言うだけで、自身を害しようとする陰の力を打ち消しても
ナンラ不思議でモないでしょう。
それを人がどれだけ知っているかは判りませんが、なにか本能的にそれを悟り、
常に他人からの負の感情に曝される立場の者にとっては魔よけそのものと
なるのです。
そんなものなのですから、金の中に埋もれた状態では、眷属を呼んでもその声は
金の中で反響するだけで、その豪力も妖力もなにもかもが封じられて
しまっているのでした。
 ソンナ時、誰かが近づいてくる足音が聞こえてきたのです。
これ幸いと、限られた視界の中に見えてきた僧侶らしき風体の者に声を
かけたのです。
「そこの者、すまぬが難儀しておる、ここからわらわを助け出してくれまいか。
さすれば、望むだけの金を与えてやるぞえ。」
最初は声の出所が判らず、キョロキョロと辺りを見回していた僧侶は、
地面から顔だけを出している女を見つけ、驚くとともに当然の事として不審の目を
向けてきたのでした。
「なんとも面妖な、地面から女子(おなご)が生えておるのか。」
その僧侶は、落ち着いた低い声で女を見やると
「いったいなぜにそのような事になっておられるのか、聞いてもよろしいか。」
女は小さく溜息を吐くと
「恥ずかしい話じゃ。
金で湯浴みをしておったら、ついうとうととしておる間に、固まってしもうてな。
どうにも力を使う事ができぬ。
すまぬが、わらわを掘り出してくれまいか。
わらわの周りにある金だけでも、人の世ならば一財産となろう、どうじゃ
欲しくはないかえ。」
僧侶はしばしの間、沈黙を守っていましたが、その口を開きました。
「そなたが何者かは判らぬが、難儀していると言うのであれば助けてしんぜよう。
別に礼などはいらぬ、拙僧は仏より一度だけは何者をも救うことをお認め頂いて
おるものでな。
では、なにか道具を探してくるよって、しばし待っておられよ。」
僧が彼女の視界から消え、数刻も経ったでしょうか、再び現れた僧侶の手には、
金づちとタガネが握られていたのでした。
「すまぬが少々響くかもしれぬが、我慢してくれ。」
と彼女の傍らにしゃがむと、タガネを彼女の埋まっている部分の傍に当て
金づちで叩き、少しずつ削り取っていったのでありました。
金属を叩くカーンカーンと言う甲高い音がどのぐらい響き続けたでしょうか、
日暮れも近い頃になって、ようやくと女の頭が自由に動く程度には金を
取り除く事ができました。
「ここまで頭を動かせれば、後はわらわでできるよって、そなたは少し
離れておるがよい。」
と、彼が離れたのを確認すると、頭を持ち上げた女は、大きく開いた口から、
紅蓮(ぐれん)の炎を自分を戒めている金に向かって吹きつけたのでありました。
少しずつ金が溶け始め、やがて黄金の糸を引きながら溶けた金の中から
全裸の女性が立ち上がったのです。
「ふぅ、ようやくと自由になれたわ。」
と、ブルブルと身体を震わせて金の滴を飛ばした彼女は、離れた所に立つ坊主に
顔を向けたのでした。
「ふふふ、どうした、女の裸が珍しいかへ。
助け出してもろうた礼として、抱かれてやってもよいぞえ。」
その、あまりにも妖艶かつ美しく輝かんばかりの裸体に、意識を奪われない
男などいはしないと云わんばかりの彼女に、僧侶は目を背けることなく
言ったのでした。
「いや、この寒空に一糸まとわぬ姿で、寒くはないのかと思いましてな。
お気に召さぬとは思うのじゃが、拙僧の衣でよろしければ、お貸しいたしますぞ。
そう言うなり、羽織っていた衣を脱ぎ、彼女に差し出したのです。
「くっくっくっ、面白い奴じゃ。
わらわの姿に心奪われぬとは、少々腹立たしくもあるが、恩人にいつまでも
このような姿を見せるのも失礼な事じゃな。」
と言うが早いか、腰辺りから伸びた黄金の毛並みを持った尻尾が、その身を包むと
一匹の大きな狐へと姿を変えたのです。
しかも、その尻尾は九つに分かれ、その一本一本が身体ほどもあったのでした。
「ほう、九尾の狐であったか。」
両の手足を着け、大きな九つの尻尾をこれ見よがしに振ると、狐は僧侶から
視線を離さず、その周囲をゆっくりと回り始めたのでした。
「ふふふ、九尾と知って恐ろしいかえ。
わらわを滅ぼそうとした者、名を上げようとした者がどれほどおったか。
奴らの行く先は、わらわがこうしてここにおるのが答えじゃがな。
どうじゃ、そなたもわらわを滅ぼし、その名を上げてみぬか。
安心いたせ、恩を受けた身ゆえ、楽に死なせてやるぞへ。」
彼は、疲れたように小さく息を吐くと
「何を勘違いしておられるのか判らんのじゃが、先ほども言いましたように、
拙僧は仏より一度は何者をも救う事を認めて頂いておるだけじゃて。
なにも恩を感じる必要はないし、恩を感じてもらえるのであれば、必要のない
殺生を控えて頂ければありがたいのじゃがな。」
何かを考えているように、九尾が頭を傾けました。
「ならば、わらわがお前への恩を忘れ、この爪、牙で生あるものを理由なく
殺し続けたとすればどうする。
二度は救ってもらえぬのかへ。」
さらに彼の口から大きな溜息が吐き出されました。
「なぜに、皆が皆同じ事を尋ねなさるのじゃろうな。
救われた恩を忘れた者が、再び救いを求めてきたのであれば、もう一度
お救いするに決まっておるじゃろう。」
これにはさすがの九尾も虚を突かれたのか、キョトンとした顔をしたのでした。
そして、喉の奥で息が詰まったような音を出したと思った瞬間、身体全体を震わせ
大きな笑い声を響かせたのでありました。
「あっはっはっはっはっはっはっはっはっ、なるほどのう、一度しか救わぬから、
もう一度救うとな。
呆れたお人良しじゃ、いくら救われたとは言え、たやすくそんな約束を守ると
思っておるのか。
仏が認めようと、神が認めようとそんなものがなんの戒めとなる。
あやつらは何もせん、ただ遠くから見ておるだけじゃ。
そうじゃ、ならばわらわがお前の力となってやろう。
わらわの力を持ってすれば、よほどの命知らずでない限り、その約束を
破るものもおらぬであろう。
守らぬ命知らずは、文字通り命が亡くなるであろうがな。
どうじゃ、わらわはお主に恩を返せ、お主は救った者に己が願いを適えさせる事が
でき、お互いに損はなかろう。」
ニヤリと口元を歪めた九尾が、その大きな尻尾を左右に振りながら僧の答えを
待っていたのですが、彼の答えは相変わらずなものでした。
「何を勘違いされておられるのかが判らぬのじゃが、お救いいたしたことに
恩を感じられる必要はござらぬと言っていますのじゃがな。
もし、恩を感じて頂けるのであれば、御身のような大妖が不必要な
殺生をされないだけで、この世も少しは住みやすくなると言うもので
ございましょう。
それだけで十分じゃと思うのじゃがのう。
いかがじゃろうか。」
その答えに、九尾は眉間にシワを寄せ、牙を剥き出しにし低く唸って
みせたのでした。
「ふんっ、つまらぬ男じゃ。
そのような甘い考えがどれだけ通用すると思っておるのか。
お前も知っていよう、九尾と呼ばれるわらわがこれまでどのような所業を
してきたのか。
わらわはこれからもわらわの心の赴くまま生きていくだけじゃ。
動物を、人を、妖でさえもこの爪で、牙で、力で、心の赴くままに惑わし、
殺め、滅ぼしていくだけじゃ。
じゃが、そなたに受けた恩だけは覚えておいてやろう。
誇りとするがよいぞえ。」
つまらなそうに僧を一睨みすると、九尾は踵を返し、暮れ始めた山へと姿を
消したのでありました。

(CMキャッチ)
「テンチェルちゃん」「テンチェルちゃ~ん」「テンチェルちゃぁ~ん」
「ハァ~イ、テテンチェルチェル、テテンチェル~♪」

 長い石段を登り終わると、そこには案内の小坊主が一人待っていました。
小坊主は彼女に頭を下げると
「和尚様はお待ちでございます。
ご案内させていただきます。」
と彼女の前を歩き始めたのでありました。
「小坊主よ、お主は女子(おなご)でありながら、なぜに小坊主なぞを
やっておるのかへ。」
問いかけられた小坊主は、振り向き、クリクリとした一つ目を彼女に向けると
「和尚様に助けて頂きました恩返しになればと、このお寺でお手伝いさせて
もらっています。
と、少しはにかんだ様子で答えたのでした。
「ふぅん、そうなのかへ。
で、わらわが恐ろしくはないのかへ?。」
が、その問いには、なんのことかと首を傾げる様子に
まぁ、力は封じておるし、これだけ若い妖ならば知らぬのも仕方がないものかと
思える自分に、なんと丸くなったことかと笑いが漏れそうになってしまうので
ありました。
やがて建物に着き、和尚の待っている部屋に入ると、あの頃とはすっかりと
様変わりした坊主が、笑顔で出迎えてくれたのでした。
「これはこれは九尾様、以前にお会いいたしましたのは何年前でしたかな。
このような山寺にお越し頂けますとは、いかがなされました。」
頭を下げる一救(いっきゅう)和尚に
「なに、わらわとお主との仲じゃ、そうかしこまるではないわ。」
にしても、お主も歳をとったものよのう。」
コロコロと笑い声を上げる九尾に、和尚は禿頭をつるりと撫で
「敵いませんな、九尾様は相変わらず美しくおられて羨ましい限りですな。」
和やかな話がしばらくも続いた後、改めて向き直った九尾が
「ところで和尚、そなたの所におる欧州の天使、あれは何者じゃ。」
それまでの柔らかな態度とは一変して、ひどく真面目な口調で訊ねてきた彼女に、和尚はこれまた常と変らぬ穏やかな声で答えたのでした。
「テンチェル殿のことでございましょうかな。
彼女は別に当寺に居候されておられる訳ではございませぬ。
気の向かれた時に、立ち寄られる程度のものにございますじゃ。
まぁ、九尾様が見られました通りの欧州から来られましたあちらの天使様以外の
何者でもあられますまい。
まぁ、少々風変わりな天使様なようではございますが、なにか気になられる事でも
ございましたかな。」
九尾の目が少し細まりましたが、
「それがわからぬ。
八岐は気にもしておらなんだが、何か引っかかるものがあるのじゃ。
それが何か判らぬから、お主の所に来たのじゃがな。」
和尚が破顔しました。
「九尾様にわからぬものが、拙僧にわかるわけがありますまい。
買い被りも、時には辛うございますぞ。」
笑い声を上げる和尚に、九尾の眉間にシワが寄りました。
「ふん、相変わらず掴みどころのない奴じゃわ。」
まぁよいわ、本当に判らぬようじゃし、わらわも忙しい身ゆえ、ここらで退散させて
もらうとしよう。
ふふ、しかし楽しい一時であった事は嘘ではないぞえ。」
と言いながら、持ってきたバッグの中を探ると、そこから分厚く膨らんだ封筒を
取り出したのです。
「ほれ、お布施じゃ。
まったく、いつまで待っても金(money)の無心に来ぬからのう。
有り余って困っておるぐらいじゃ、遠慮なく納めるがよいぞえ。
足りぬのであれば、渡してある小切手に好きな数字を書いて届けよ。「
それは封筒を立てに立てても倒れる事のない厚みを誇っていました。
「これはこれは、ありがたい事でございます。
謹んで納めさせて頂きますじゃ。
にしましても、世の風聞によりますと、九尾財閥、今は九尾グループと
おっしゃっていましたかは、なかなかに繁盛されておられますようで、羨ましい限りでございますな。」
九尾の眉間に再びシワが寄りました。
「ふん、他愛も無い事じゃ。
金(gold)を集めるのには、銭がいるだけの事。
知らぬ間に会長などと祀り上げられてしもうたが、どうにも窮屈で敵わぬ立場と
なってしもうたわ。
お主と出会った頃の、好きな時に好きなだけ金(gold)の湯浴みをしていた頃が
懐かしいわ。
さて、いつまでも長居をしては、外で待たせておる者どもが、そろそろ
痺れを切らせてしまうじゃろうし、また、其のうちに寄らせてもらうぞえ。」
腰を上げた九尾に続き、立ち上がった和尚も
「いつでもまたお越しくだされ。
その時は、土産など持たず、手ぶらで来てくだされ。
この歳になりますと、昔の話が一番の土産となりますのでな。」
二人して、廊下を歩いていると先の、角から一人の女の子が飛び出してきました。
「あっ、和尚さん和尚さん、ちょっとお尋ねしたいのですけどっ!」
それは背中に二枚の翼を背負った、見習い天使でした。
手を振りながら駆け寄ってきた彼女も、和尚の後ろにいた女性に気付き
「あっすみません、お客様でしたか。」
とペコリと頭を下げたのです。
その様子に、薄く微笑を浮かべた九尾も会釈し、すれ違って行ったので
ありました。

◎プロフィール
名前 : 貴常野 九美(きつねの きゅうび)・
年齢 : 不詳(本人も気にしてはいません)
幕末の官軍に対する金銭的な助力から、清国、ロシアとの戦争を経て
第一次世界大戦に伴う我が国の経済的発展に乗り、
頭角を現し財閥となった九尾財閥の会長。
第二次世界大戦後の財閥解体によりグループ企業となったが、現在も金融・証券を
中心に、安定した企業活動を行っている。
創業者でもあり、現会長の貴常野会長の当時を知る者は既に、鬼籍に
入った者ばかりとなってしまっているが、当時の貴重な写真や映像資料に写る彼女は、
現在とほぼ変わらぬ姿で写っており、彼女を知る者達の間では「妖怪」と
呼ばれている。
ただし、それを信じる者もまたおらず、密かに代替わりが行われ、あの化粧は
それを隠すためのものであると言われているが、それを確認した者も、
またいない。
ただ、結婚したと言う話や伴侶を得たと言う話は一つもなく、代代わりは、
戸外の部下や身内の者、英才教育を受けた養子であると言う噂である。
趣味と言うものは、ほとんど聞かれず、唯一金(gold)の収集を趣味としている。
それらの金が人目に着く事はなく、全て隠し金庫に仕舞ってあると言われて
いるが、金を部屋に敷き詰め、裸で金の中に埋まり喜悦に浸っているとも
噂されている。
あくまでも噂でしかなく、ライバル企業によって流されたものと言われている。
が、えてして噂とは、真実を突いている事も、よくある話であったりもする。
名前 : 九尾の狐(固有の名はない)
 かつては、恐怖の代名詞とも呼ばれていた大妖であり、その心の赴くまま、
楽しむために、人はおろか同じ妖でさえも惑わし、滅していたが、ある時期を境に
その名が聞かれなくなった。
稀にその存在が明らかとなる事があり、以前として彼女が健在である事が
確認されてはいる。
彼女の活動が下火になった原因として、人の国を挙げての九尾討伐が行われた、
僧侶、神官、陰陽師などの集団、もしくは妖怪達の連合との戦いによりその力を
大きく削がれてしまったなどの噂があるが上記にもあるように、彼女の
存在が確認された際には、以前と同じように、その力を誇示した凄惨な状況が
残されており、決してその妖力を失った訳ではないことを示している。
それ故に、なぜ彼女の活動が下火になったのかは噂の域を出ることはなく、
人妖を問わず、その関係者にとって、動きの掴めない彼女の動向は、
頭の痛い問題となり続けているのが現状である。
以上のように、人としても、妖としても、いずれも彼女についての情報は、
噂の域を出るものではない。

番外編第5話 お・し・ま・い・♪
(2021.03 by HI)

◆ ◆ ◆

さりげなく登場した脇のキャラクターさんに光が当たり、
また別の世界が広がっていく番外編シリーズも5話目となりました。
今回の主役はインドメタルカレー・・じゃなくて九尾の狐さんでしたね。
そうして広がった世界と、意外な人との遠い古でのえにしが妖しく絡み合う奇譚に
私はまたしても、時空にゆらめく巨大な振り子に吸い込まれそうになるのを感じました。
暑い暑い夏の日に、テンちぇるちゃんがウトウトしてしまった山寺の和尚さん、
たまたまテンちぇるちゃんの姿が見えただけの、にこにことつかみどころのない
ただの和尚さんじゃなかったみたいですね。
「一度だけ救うから、もう一度救う」
奥深い言葉を反芻するうちに、ようやくその名もただの駄洒落じゃなかったことに気付きます。
ほんとは私の拙い感想じゃなく、HIちゃんがストーリーにつけてくださる解説をご紹介したいと
何度も思います。
でも、豊かな思想に根差しているからこその深みのある物語、
精彩溢れる表現の底に流れる思いは語らずもがなのことと思い、
やはり公開は「お・し・ま・い・♪」の手前までとさせていただきます。

といいながら、実は次のお話も手元に届いております~と
ちょっとだけ手の内を公開しちゃいました♪
出番を待ってるのは誰でしょう?
次回もどうぞお楽しみに!
HIちゃん、いつもありがとうございます。


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