天使の杖でおいでやす トップページへ戻る

番外編第3話

王子様だょ ミヤコちゃん♪


「テンちぇるちゃん」「テンちぇるちゃ~ん」「テンちぇるちゃぁ~ん」

「ハァ~イ、テテンチェルチェル、テテンチェル~♪」


 辺り一面に生えている花の蕾が、日の出とともにポンポンと音を立てて
次々と花開いていきます。
開いた花の中には、小さな羽の生えた天使が、一花に一体ずつ
入っていたのです。
花が開くと同時に目覚め、大きな欠伸をしながら伸びをする者、眠い目を
こすりながら辺りを見回す者、一度は起きたものの、再び眠ろうとする者など
入っているいろいろな天使をモスエル・ド・テレサと呼ばれるふくよかな大天使の
指示のもと、多くの天使達が次々と抱き上げていきます。
笑顔を絶やさず、目に付く生まれたばかりの天使に優しく声をかけていた
天使の中から、悲鳴が沸きあがりました。
モスエルがその天使の見つめる花に向かい、中を覗き込みますと、そこには
やせ細り、十分に成長しきれていない天使が横たわっていたのです。
モスエルが愕然と花の中を覗き込んでいた天使をしりぞかせ、癒やし手の天使を呼び、
花の中の女の子が元気な笑顔を見せて起き出すことを祈りましたが、癒やし手の天使は、
ゆるゆると首をふるだけだったのです。
彼の見立てはこうでした。 
「この天使からは、聖なる力が全く感じられません。
 そのため、我ら天使の基本となる力が足りていず、手当てをしてもいつまで生きられるものか。
 命を永らえたとしても、飛ぶことはおろか、まともに立つことさえできないでしょう。」
天使は聖なる力を持って生まれてきます。
それは身体の成長だけでなく、天使としてのあらゆる能力、身体を動かすための
力として無くてはならないものなのです。
ごく稀にこの聖なる力を持たずに生まれてくる天使がいるのですが、その天使は
なにもできずに衰弱死してしまうか、一生動くこともできずに命を終えてしまうのです。
「貴方の癒しで、なんとかできませんか。」
花の中に横たわる天使を悲しげに見つめ、モスエルが癒やし手の天使に問いかけますが
なんとかできるのであれば、彼もとっくに対処していた事でしょう。
それがわかっていても問わずにはいられなかったに違いありません。
「そうですね、後はこの天使が、今の命が尽きるまで、よき思い出を作らせ、
 輪廻の転生の中で、次の誕生の糧とできるようにするのが私達の役目で
 ございましょう。」
未だに取り上げられることのない花の周りに集まった天使達は、沈痛な面持ちで
花の中を見つめるばかりでした。

(CMキャッチ)
「テンちぇるちゃん」「テンちぇるちゃ~ん」「テンちぇるちゃぁ~ん」
「ハァ~イ、テテンチェルチェル、テテンチェル~♪」

 女の子がベッドの中から窓の外の景色を見つめています。
身体は自由に動かせませんので、大きなクッションに背中を預け、飽きる事無く
外の景色を見ています。
連れ立って道を歩く天使、塀の上を器用に歩いていく猫、枝の上で羽を休める鳥と
いずこへか飛んでいく鳥達。
彼女の視界のほとんどを占める空には、たまに鳥の他に天使の飛ぶ姿も
見ることができました。
でも、そのどれ一つとして彼女にできることはありません。
頭や手はなんとか動かす事はできましたが、それも力なく動かすだけです。
ましてや歩く事はもちろん、立つことさえできはしません。
外の景色を眺めているか、モスエルや他の天使がお話しに来てくれるのを
待つしかありませんでした。
同じ時に生まれた天使はおろか、歳の近い天使にも、会った事すらなかったのです。
昨日も今日も、そして明日も同じ一日が始まり過ぎていくのを見ているしか
ないのです。
そんな一日が今日も過ぎていくはずでしたのに、一筋の風が彼女の頬を
くすぐっていきました。
戸締りのされたこの部屋は、誰かが戸を開けない限り風が入ってくる事は
ありません。
モスエル達が来るには、いつもより早い時間です。
彼女はゆっくりとその風が吹いてきた方向に顔を向けました。
本人は普通に動かしているつもりなのですが、その動きはもどかしく、
とても時間のかかった動きなのでした。
ようやく彼女が、風の吹いてきた方向に顔を向けると、そこには初めて見る
とても綺麗な天使がにこやかな微笑とともに立っていたのです。
「おや、起こしてしまいましたか、こっそりと見ていくつもりだったのですが
 申し訳ないことをしました。」
かるく頭を下げた天使は、音も立てずにベッドに近寄ると、彼女の頭を
ゆっくりと撫でたのでした。
「本当に君は聖なる力を持ってはいないのだね。
 力の大小はあるにしても、ここまで感じないのは初めてです。
 これでは、少し身体を動かすのも大変な事でしょう。」
いたわるように、ポンポンと軽く頭に触れて彼は更に言葉を続けました。
「聞いているかな、僕達天使は、聖なる力を使って身体を動かしたり、
 空を飛んだりするのです。
 ですから、特に何をしなくても思い通りに身体を使う事ができます。
 反対に、君のようにこの力を持っていないと、何をするにしてもものすごい
 努力を必要としてしまうのです。
 でもね、それは決してできないという訳ではないのですよ。
 外にいる犬や猫を見たことはありますよね。
 彼らも君と同じように、聖なる力を持ってはいませんが、自分で大地に立ち
 自由に駆けているのです。
 空を飛ぶ鳥のほとんども羽を羽ばたかせ自分の力で空を飛んでいるのです。
 私達に似た生き物に、人というものがいます。
 彼らもまた、聖なる力を持ってはいませんが、犬、猫と同じように地面に立ち、
 動き、走っています。
 ですが、それは生まれてすぐにできたものではありません、長い時間をかけ、
 少しずつ成し遂げていった結果自らの力で大地に立てるようになるのです。
 これが何か知っていますか?。」
彼が胸元から取り出したのは、木で出来た小さな檻でした。
天井の蓋をあけ、そこから取り出したのは、楕円形のまるまるっこい身体に
六本の細い足と、頭に長い角、背中に短い角を付けた動物でした。
「これはカブトムシといってね、昆虫の中の王様って言われている虫なんだ。
 ん~と、ちょっとそのリンゴを借りるね。」
急にザックバランな言葉使いとなった彼は、籠の中に入っていた果物の中から
リンゴを取り出すと、器用にリンゴとカブトムシの背中の角を紐で結びつけ、
サイドテーブルに置いたのでした。
最初は、戸惑ったようにじっと動かないでいたカブトムシが、細い足を動かして
歩き始めました。
やがて、ピンと糸が張ると、一度は動きを止めた後、力強くグイグイと
自分の数倍もあるリンゴを引っ張って歩き始めたのです。
「ねっ、すごいでしょ。
 自分よりもこんなに大きなリンゴを動かして歩く事ができるんだよ。
 もちろん、カブトムシは聖なる力なんて持ってはいないし、もちろん魔力も
 持ってはいないからね。
 自分の身体の中にある、筋肉っていうものだけを使って、これだけの力を
 出しているんだ。
 これが、聖なる力や魔力なんかとは関係なく、僕達を含めて全ての生き物が
 持っている力なんだ。
 もちろん君にもこの力は備わっているんだよ。
 今君が頭を動かしたのも、指を動かせているのも、その筋肉の力に他ならないんだ。
 でも、それを自由に動かせるようになるのは、とても大変なことなんだ。
 僕達が簡単にできる事でも、君がやろうとすればそれにはとても大変な努力と
 時間が必要となるし、何年かけたとしても、どれだけの事ができるようになるかは
 正直僕にもわからない。
 だけど、できない訳じゃない、必ず大地に立ち、走り、空だって飛べるようになれる。」
彼はそこで言葉を収めると、改めて彼女に向き直りました。
「どうだい、やってみるかい?。
 もし、君が今のままでもよいと言うならそれでもいいし、今が辛い逃げたいと
 いうなら、僕が輪廻の流れの中に戻してあげるよ。」
彼女の真意を見極めるように彼の目がすぅと細まりました。
彼女の無表情な顔がゆっくりと窓の方に向き、その手が震えながらゆっくり、
ゆっくりと持ち上がり、窓を指差したのです。
「・・・お外・・・。」
彼女の目から一粒の涙がこぼれると同時に、上げていた腕が支えを失ったように
パタンと布団の上に落ちました。
正直な所、彼女がどんな答えを返すかは彼にも判らなかったのでしょう、
小さく溜息を吐くと、元の明るい笑顔に戻しました。
「じゃぁ、そのように計っておくけど、覚悟はしておいた方がよいよ、
 そのカブトムシぐらいの事ができるようにはなってもらうからね。」
白い葉をキラリと光らせ、少女に向かって悪戯っぽくウィンクをしましたが、
残念なことに両目が閉じてしまっていました。
「あっ、しまった、そのカブトムシは君にプレゼントしようと思っていたのだけれど、
 この部屋に虫を入れるとモスエルが怒るんだ。
 そうだ、君がそのカブトムシぐらいの事ができるようになったら、
 その時に改めてなにかプレゼントを用意させてもらうとしよう。
 うんうん、本当に彼女の雷は怖いからね、」
彼がおどけてモスエルの怒りマネをすると、無表情だった少女の口角が少し
持ち上がりました。

(CMキャッチ)
「テンちぇるちゃん」「テンちぇるちゃ~ん」「テンちぇるちゃぁ~ん」
「ハァ~イ、テテンチェルチェル、テテンチェル~♪」

 ハウスの裏の道を、杖に体を預け、ゆっくりと、一歩ずつ確かめるように
歩いている女の子がいます。
あの天使に会ってから数ヶ月後、脚を震わせながらも一人で立ち上がった時、
彼女を最初に診た癒し手の天使が
「まさか、私は今 奇跡の瞬間に立ち会っているのかっ!。」
そう言って彼女を抱きしめた天使の涙が止まらない内に彼女がぐったりしてしまい、
その場に居た全員を騒然とさせたハプニングも、もう、以前のお話です。
あれから一年、まだまだ普通にとは程遠い歩みですが、杖を使えば一人で
歩くことができるようになったのです。
モスエルは
「そんなに急がなくても大丈夫ですよ、ゆっくり身体を慣らしていきましょう。」
と言ってくれるのですが、彼女には一秒でも早く、成し遂げなければならない事があったのです。
あの、カブトムシの王子様と交わした
「君が自分の数十倍の岩を持ち上げられたなら、プレゼントをあげよう。」
という約束です。
本当はプレゼントなんかどうでも良かったのです。
あのカブトムシの王子と名乗っていた彼に、自分ができるようになったところを
見てもらいたかったのです。
それには彼に会わなければいけません。
でも、彼女は彼の名前も知りませんし、容姿も金髪で、笑うと白い歯が
キラリと光った事しか覚えていないのです。
ですから、彼に会うためには、自分が大岩を持ち上げられるようになって、
彼から会いに来てもらうしかないのです。
モスエルに聞けば、誰かはわかったのかも知れませんが、彼が言っていたではないですか。
「モスエルに部屋に来たことがバレると、雷を落とされてしまうんだ」と。
彼をそんな目に合わせるわけにはいきません。
ですから、ゆっくりなどしていられないのです、一刻も早く動けるようになって
大岩を持ち上げてみせたいのです。
どうやら、彼女の記憶は物凄い化学変化を起こしているようでした。
歩く練習は、3回に2回はモスエルに見つかって、呆れたように連れ戻されるのですが、
今日は無事に抜け出す事に成功しました。
いっぱい歩いて、先ずは走れるようになる事が目標です。
歩き始めてから、随分と時間が経ちましたので、どのぐらい進んだのかと
振り向きますが、すぐそこにハウスが見えますので、気持ちが萎れそうになってしまいます。
けれども目の前で身体の何十倍もある大岩を、笑顔で軽々と持ち上げて見せてくれた王子様を思い出せば、
このぐらいで挫けている暇はありません。
気持ちを奮い立たせ、また一歩足を踏み出した時、聞きなれない声が聞こえてきました。
「おいおい、なんか変な奴がいるぜ。」
前を見ると、三人の男の子がこちらに向かって歩いて来るところでした。
歳はよくわかりませんが、彼女より年上でしょう。
無表情に、杖に身を預け立ち止まっている彼女の前に、三人の男の子達が
道を塞ぐように立ち止まりました。
真ん中の男の子は、丸刈りの髪に太り気味で一番大きい身体をしています。
右の男の子は、整えた髪形で、背は低く、ニヤニヤと相手を小バカにした
笑いを浮かべ、左には、眼鏡をかけた痩せた男の子が、真ん中の男の子と彼女を
オドオドとした様子で何度も見返していました。
「気持ち悪い奴だな、おい、今からここは俺達の遊び場になったんだ、
 お前はあっちにいけっ!。」
彼女は無表情にその男の子を見ているだけで、動こうとはしませんでした。
「おいっ、なんとか言えよ。」
一番大きな男の子が声を荒げた時に、左の背の低い男の子が言いました。
「ジャイアネル、僕、こいつ知っているぜ。
 あそこのハウスに居る奴で、いつもこの辺りをノロノロと歩いているんだ。
 それに、こいつは空も飛べないんだぜ。」
ジャイアネルと呼ばれた男の子が大笑いしました。
「なんだって、スネウェル、そりゃ本当か。
 天使のくせに空を飛べないなんて、本当に天使なのかよ。
 人が天使の真似をしてんじゃねぇのかぁ~。」
「そりゃいいや。」
ジャイアネルとスネウェルが、大笑いしながら踊り出しそうな勢いで
囃し立て始めました。
「ねえ、そんなに言っちゃ可愛そうだよ・・・。」
「なんだとっ、ノビチェルのくせに生意気だぞっ!。」
恐る恐るとジャイアネルに言った左の眼鏡の男の子は、、彼に大声で
怒鳴られると「ひぃ」と肩をすくめて黙ってしまいました。
彼女は無表情のまま、ゆっくりと持っていた杖を上げていきましたが、フルフルと
震えているうえに、肩の高さを越えたところで、ストンと下がってしまい、
しかもその反動で、ヨロヨロとよろめいてしまっています。
「おっおっなんだよ今のは、ひょっとしてそれで俺様を殴ろうとでもしたのかよ。
 おいおいスネウェル、見ろよ、あの杖で俺様を殴る気っアググァ!」
横を向いたジャイアネルが前に向き直ったタイミングで、彼女が再び杖を
上げていたため、それがジャイアネルの口に入ってしまったのです。
彼女は無表情なままでしたが、その口角が少し上がりました。
「ペッペッ、畜生何をしやがるっ、空も飛べないくせに生意気だぞっ。」
口に入った杖を払いのけ、怒りも顕に女の子に近づいたジャイアネルは
ドンッと彼女を突き飛ばしました。
もちろん彼より随分と小柄な彼女は、あっさりと突き飛ばされ、ゴロンと
地面に転がされてしまいました。
さすがに蹴るのはマズイと思ったのでしょう、ジャイアネルは地面の土を蹴り、
土や小石を彼女にぶつけ始めたのです。
「あ~、悪い悪い、サッカーの練習をしていて土が飛んでいっちまったよ~。
そんな所で寝転んでいると、またかかっちゃうぜ。」
と笑いながらジャイアネルとスネウェルがどんどん土を蹴っていきます。
「ねぇ、だめだよそんな事したら可愛そうじゃない。」
「うるさ~いっ、ノビチェルもやらねえと後で酷い目にあわせるぞっ。 !」
「ええ、そんなぁ・・・。」
情けない声を出した彼も、小声で「ごめんね」と言いながら二人と同じように
土を蹴り始めました。
彼女の髪、翼、衣服があっとい言う間に土まみれとなってしまいました。
「・・・ちょっと・・・疲れちゃった・・・。」
彼女がそう思った時、その存在が薄らぎ始めたのです。
そして、なんとなく見上げた空には雲ひとつなく、太陽が眩しく輝いていました。
すると、その太陽の横から一体の天使が現れたのです。
その天使は、黄金色に輝く大きな幾枚もの翼を羽ばたかせ降りてきたのです。
彼女の心はドキンと撥ね上がり、その存在も確かなものへと戻っていきました。
カブトムシの王子様が私を助けに来てくれたのだと。
ですが、それは彼女の王子様ではありませんでした。
「たああ~っ!」
と子供特有の甲高い叫び声とともに落ちてきたのは一体の小さな天使だったのです。
天使は何事かと空を見上げたジャイアネルの身体に両足をぶつけ、そのまま彼を
吹き飛ばし、そして、小さな羽根を動かし、彼女と男の子達の間に
舞い降りたのです。
「なにやってんのよ、こんな小さい子を苛めて楽しいのっ。」
いきなり落ちてきたのは、自分達より小さな女の子でしたが、ジャイアネルを
吹っ飛ばされたスネウェルは腰が引けてしまっていますし、ノビチェルに至っては、
おろおろとジャイアネルと落ちてきた女の子を、ただ見ているだけでした。
「いてててて、畜生、誰だお前、チビのクセに生意気だぞっ!。
 カチャエルにだって、蹴られたことはないのに、クソッ。
 酷い目にあわせてやっからな~っ。」
がばと起き上がった彼は、女の子に向かって行こうとしましたが、それより早く
ハウスの方から声がかかったのです。
「コラッあなた達、そこで何をしているのっ」
その声を聞いた三人は
「やべ、モスエルだっ、逃げろっ!。」
と、来た道をバタバタと走って逃げていったのでした。
グッと拳を握り締め男の子達を睨みつけていた天使は、彼らの逃げていく
後ろ姿を見ると「あ~、怖かったぁ~。」と肩の力を抜いて振り返り
「大丈夫、怪我してない。」
と太陽が輝いているような明るい笑顔で女の子に話しかけたのでした。
「あらあら、大変、一体どうしたの。」
やってきたモスエルが土だらけになって倒れている女の子を立たせると、ついていた
土や砂を、風を起こして吹き飛ばし、ハンカチを水で湿らせると彼女の顔の汚れも
綺麗に拭き取ってくれました。
「こんなに汚れて、いったいどうしたの?。」
女の子は、前に立っている天使を見ながら
「・・・助けてくれた・・・。」
まぁ、この子の言葉が足りないのはいつもの事ですし、前にいる子が、
走って逃げていった男の子から、なにやら助けてくれたと言うことに違いはないでしょう。
「そうなの、なにがあったかは後で聞くとして、この子を助けてくれてありがとうね。」
「なんて事ないよ、あいつらぐらいいつでもやっつけてやるから。」
と鼻を擦りながら笑っています。
「それにしても、一人で出てはいけないと言わなかったかしら。
 熱心なのはいいけれど、なにかあった時に、あなた一人ではどうにもできないって
 わかったでしょう。」
モスエルが女の子を見て溜息をついています。
「この子、一人でお外に出たらいけないの?。
 だったら、明日から私が一緒に居てあげるよ。」
ニパッと笑った天使が、事無げに言いました。
「・・・私といると退屈・・・。」
女の子が小さな声で言うと、
「大丈夫だよ、もうお友達だから、お友達になったらお友達はお友達を
 お友達でお友達がお友達だから・・・あれ?。」
どうやら自分で自分の話が判らなくなったようです。
「あははははははっ、だからお友達は退屈じゃないの。」
私、テンちぇる、あなたは。」
女の子は無表情のまま小声で言いました。
「ミヤコウェル・・・。」
「じゃぁ、ミヤコちゃんだね、私はテンって呼んでね。」
笑いながらミヤコウェルの手を取ったテンちぇるが、ぶんぶんと手を振ってから
二人並んでゆっくりと歩き始めました。
「あらあら、ミヤコウェルのお友達になってくれるの、ありがとう、私も嬉しいわ。
 じゃぁ、お友達が出来た記念に、一緒におやつでもどうかしら、美味しいケーキがありますよ。」
三人が並んでハウスに向かっていると、ミヤコウェルが小さく言いました。
「・・・てん・・・。」
テンちぇるが応えます。
「なぁに、ミヤコちゃん?。」
ミヤコウェルが言います。
「・・・うん・・・。」
「あはははははは、そっかぁ、ケーキ楽しみだね。」
テンちぇるもモスエルも笑顔で歩いています。
ミヤコウェルも、初めて白い歯ガ見えるほど口元が綻んでいたのでした。

◎プロフィール
○名前 : ミヤコウェル(通称、ミヤコちゃんまたはミヤちゃん、極一部では
アイアン・メイデンとも)
○趣味 : 筋肉を着ける事(筋トレをする事ではないです。)
○好きなタイプ : カブトムシの王子様一筋ですが、それが誰なのか判っては
いませんので、とりあえず金髪で白い歯ガ輝き、自分より強く、大岩を片手で
楽々と持ち上げられる相手なら王子様の可能性がありますので、お付き合い
いたします事には、なんらやぶさかではありません。
○特技 : 聖なる力を持っていませんので、全てを筋肉と呼ばれる体内の
物理的な反応で行う珍しい天使。
それ故に聖なる力を使っての動きよりトリッキーな動作を行うことができ、
闘いにおいては、格闘戦を得意としています。
○嫌いなもの : 特にありませんが、計算や観察などは嫌いと言うより不得意。
計算をしている途中で、いろんな箇所が奇妙にくっ付いたりするため、
なぜ答えが違うのかが不思議で仕方がなかったりいたします。
観察記録や読書などでも似たような現象が起こっています。
○性格 : 見た目は、線の細い深窓のご令嬢ですが、スタイルは抜群という、
テンプレ美少女。
性格も品行方正で、誰にも優しく努力を惜しむ事はありませんし、努力を
している者に対しても、称賛を惜しむ事はありません。
が、 最終的には拳で語るタイプだったりしますが、クラスメイト以外は見た目で
騙されていたりします(彼女は騙すつもりなど毛頭ありませんが。)
○得意科目 : 身体を使う科目全般、美術(絵や彫刻など)関係。
調理実習などでも、その技術には眼を見張るものがありますが、味は非常に個性的な
ものとなる事が多いらしいです。
頼まれれば喜んで作ってくれますが、非常に危険であります。
○嫌いな科目 : 特にありませんが、嫌いでないと得意は違いますよね。
○スリーサイズ : 秘密ですが、その数値を知った女性と達が、
ハンカチを噛み締め、血の涙を流したという噂が絶えた事はありません。
○ミヤコウェルのカブトムシの王子様とは : 金髪で笑うとキラリと白い歯が
光る天使だという以外はよく覚えていません。
自分で「私はカブトムシの王子。」と名乗っていたような気がするのが、
唯一の手がかりで、ミヤコウェルに夢と希望を与えてくれた、憧れの王子様です。
軽々と自身の数十倍はある大岩を持ち上げるほどの筋力の持ち主で、
頭には大きな角、背中に小さな角が各一本づつあり、手足は6本(手が4本と
足が2本だと思われます)が、あったような?と記憶しています。
キョウエルが推測するところでは「6本の手足ではなく、6枚の翼を間違えたのでは、
それはミカエル様じゃないのかしら?」と言ったところ、
「私の王子様が、あのような軟弱な天使であるはずがないっ!」
とミヤコウェルに一刀両断に否定された事があります。
現在新しい情報は何も得られてはいないので、彼女が約束通り軽々と大岩を
持ち上げられるようにならない限り、会う事はできないと考えています。
 ミヤコウェルにとっては、キャンディキャンディの丘の上の王子様のような
存在なのでしょう。

知らなくてもなにも困らない設定
「天使の名前について」
 下級天使には名前しかありませんが、上級天使になると姓がつきます。
そして大天使になると、名と姓の間にドが入ります。
例えば、レイモチェル・バーバシー(reimochel・barbecyならば上級天使で、
モスエル・ド・テレサ(mother・do・teresa)は、ドが付いていますので、大天使と
なります。
ちなみに、大天使のミカエルならば正式には
「ミカエル・ド・バニングス(michael・do・Bunnings)」、
ガブリエルは「ガブリエル・ド・キッス(gabriel・do・kiss)」となります。
ですが、よほど公式な場以外でない限りは、名前しか使われません。
 三体の男の子は、ジャイアネル、スネウェル、ノビチェルと名前だけしか
ありませんので、下級天使となりますが、学校を卒業して初めて天使を
名乗る資格を得られますので、正確には天使未満の天使と言ったところになります。
が、特に呼び名はありませんので、総称して天使と呼ばれます。
どこかで聞いた名前のような気がした場合、それは気のせいです。
ちなみに、カチャネルは、ジャイアネルの後見の下級天使です。
妹分にはジャイケルという女性タイプの天使がいます。
 特筆すべき点として、このジャイアネルは、上級天使となった時に
「タケシェル・ゴーダ」と名前が変わった珍しい天使として有名です。
妹分のジャイケルは、そのまま「ジャイケル・マクソン」となっていますので、
なぜ彼が名前を変えたのかは現在も明らかにされていません。
 余談ですが、この妹分は、天才的な歌唱力とダンスで世界を魅了した
あのポップス・クィーン「ジャイケル・マクソン」その天使です。
 天使には他にも、ドラモエル・ミライ、シズカエル、デキスゲル、
ドロンジェル、トンズウェル、ボヤッケルなどがいたりします。
多分出て来ないとは思いますが、確約はしかねますのでその時はよろしくお願いいたします。

番外編第3話 お・し・ま・い/♪
(2021.1 by HI)

◆◆◆

全3話にわたってお送りしたミヤコちゃんシリーズ、
実はこんな過去が秘められてたんですね。

「どこでも筋トレを行い、強さを求めるミヤコウェル、でもその背景には
生きるための必死の努力と、小さな恋心が隠されていたのですぅ。」
(HIちゃんからのあとがきより)
誰よりも強くかっこよく、一見空気を読まない天然ちっくなキャラ・ミヤコちゃん。
でももしかしたら、旗からは羨ましい限りに見える人(天使)の内側にも、
人知れない努力、一途さ、弱さ、けなげさ、可憐な心・・いろんな面があるのかもしれません。
最終話で初めてそう気づかせてくれるストーリーに世界の奥深さを感じ、
物事を見つめ直す目線を与えてもらいました。
それにしても、子供の頃は深く考えずおもしろがって見てたけど、
世の中はなんでジャイア○とスネ○とノビ○でできているんだろう?
威張り屋、意地悪、怠け者、意気地無し、
みんないなくなればいい、社会からも、自分の心の中からも・・
消えそうになるミヤコちゃんが悲しくて、ただ泣いてしまう弱い私に
お日様のような元気と勇気、笑顔をくれたのは、我らがテンちぇるちゃんでした。

そんな本編を吹き飛ばすオマケとして
ポップス・クィーン ジャイケル・マクソンのテーマをお送りいただいたので
ここに添付し、ミヤコちゃんシリーズのエンディングとしたいと思います・・
と思ったのですが、残念!ここで時間となりました(笑い)

HIちゃん、いつもありがとうございます。
そしてジャイケル、いつの日か、きっとまた!


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