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妖怪になりたいょ テンちぇるちゃん♪


「テンちぇるちゃん」「テンちぇるちゃ〜ん」「テンちぇるちゃぁ〜ん」

「ハァ〜イ、テテンチェルチェル、テテンチェル〜♪」

 まだ雪の残る山の中、サクサクと足跡をつけて楽しんでいたテンちぇるちゃんに、
どこからか声がかけられました。
「天狗さん、天狗さん。」
辺りには誰もいません。
天狗と呼ばれるのに慣れっこになってしまっている彼女は
キョロキョロと見回しましたが、やはり誰も見つける事ができません。
「?空耳かしら?」
小首を傾げていると、
「天狗さん、女の天狗さん。」
と再び声が聞こえてきました。
今度は間違いなく聞こえましたので、辺りをよくよく見回してみますと、
少し離れた木の葉の陰から、小さな白い何かが彼女を見ているのに
気がつきました。
白い身体が背景の雪の白さに紛れてしまっていますが、
それもそのはず、そこにいたのは両の手の平に乗ってしまうぐらいの
小さな 雪ダルマだったのです。
小さな雪玉の頭に、それを少し大きくした雪玉の身体。
長方形の眉にまん丸の目玉、そして眉と同じ長方形の口と、この国で普通に
子供たちが作りそうな雪ダルマがテンちぇるちゃんに声をかけていたのです。
これはなかなかに女心をくすぐってくれる一品でしたが、なぜに雪ダルマがと
思っていますと、彼(彼女)はこれまた子供がクレヨンで描いたような
細い手足をピョンと出して雪の上に立ち、トコトコと彼女の傍まで
やってきたのです。
そして、ピョコンとお辞儀をすると、
「天狗さん、天狗さん。
 天狗さんは物知りだとお聞きしました。
 ですから教えて欲しいのですが、妖怪になるにはどうすればよいのでしょうか?。」
間違われますのはいつもの事ですが、妖怪になりたいと言われましても
天使にそんな事判るはずもありません。
とはいえ、そのまま「知らない」と突っぱねて終わらせるには、
雪ダルマの声には切羽詰まったものがあったのです。
 話を聞くと、雪ダルマは、元々はこの街のもっと南の方で作られたのですが、
この辺りと違って、今の時期では既に雪が無く、そのままそこに居ては
溶けてしまうのを待つだけとなってしまうため、雪のある場所から
雪のある場所へと移動している内に、こんな山の頂上近くまで来てしまったそうなのです。
しかしいくら山の上とはいえ、もうまもなくもすれば雪が溶けてしまうのを
避けられないのは、火を見るより明らかな事。
ならば、妖怪となれば溶けずに済むのではないかと、天狗に知恵を求めたと
いう事らしいのです。
が、なんとか天狗を見つけたと喜んだものの、それが目的の天狗ではなく
天使であり、妖怪になる方法を知らないということで、雪ダルマがガックリと
肩を落としてしまったのも可哀そうなお話です。
天使のお仕事は人を導くこととはいえ、困っている者を助けるのは当然の事。
天狗に会わせてあげようと、彼(彼女)を抱えて空に飛び立ったのでした。
 空に飛びあがった彼女の腕の中から下界を見た雪ダルマは初めて見る風景に
文字通り目を丸くしていましたが、遠くに街並みから突き出した塔を見つけると、
確かあの塔の傍から歩き始めたのであったと思い出し、
よくこんな遠くまで来られたものだと自分で感心していますのです。
初めて見る広大な風景に気を奪われていると、遠くになにかゴマ粒のようなものが
飛んでいるのが見えてきました。
その、ゴマ粒のような、鳥のような一団に向かって、彼女は大きく手を振りながら
近づいて行ったのでした。
 その一団は、近づいてくる者を認めると、手にしていた六尺棒を構え、
それと向きあう形で陣形を組んだのでありました。
その中の一体が、唐突に声を上げたのです。
「あっ、すいません、すいません、アレ天狗じゃないです、俺の知り合いです。」
陣を外れ、前に躍り出た1体が言うように、よくよく聞けば
「三郎く〜ん」
と彼の名を呼ぶ声が聞こえてきますし、姿も自分たち烏天狗や天狗とは
随分と違った服装をしています。
それに、声やその姿から、どうやら女子のようではないですか。
「なんじゃ、三郎の知り合いか。
 ほほぉ、ならばあの女子(おなご)が噂の外国から来たお前の彼女か♪。」
前に出ていた三郎の肩がビクンッと撥ね、勢いよく後ろを振りかえると
「違います違いますって、ただの友達ですから〜っ。」
ですが、にしては頬が一気に紅くなっています。
「わっはっはっはっはっ、よいよい、ほれ早く行ってやれ。
 もう高野(こうや)の連中も来ぬであろうし、後は我らだけで事は足りよう。
 ほれ遠慮せず早く行ってやれ。」
他の烏天狗達からも、やんややんやとからかいの言葉が飛んできます。
「あっありがとうございます。
 でも、本当に違いますからね、ただの友達ですから勘違いしないでくださいよ。」
と渋々と呼ばれたから行くような仕草をしていましたが、なんとも他の者が見れば
もう身体全体から、ウキウキとした気持ちが溢れているのが
バレてしまっています。
集団から離れて、彼女に近づいていく早さも、いつもより1.5倍増です。
あっと言う間に、テンちぇるちゃんの前まで来ると、息を弾ませ訊ねてきました。
「どうしたんだよ、こんな所に。
 なんかあったのか、困りごとか、まさかヨーロッパに帰るってんじゃっ!」
あたふたと言葉を重ねる三郎に、
「私じゃないんだけど、この雪ダルマさんが妖怪になりたいそうなんだけど、
 どうすればなれるか知ってる?。」
と手にしていた彼(彼女)を見せると、雪ダルマはペコリとお辞儀をして
事の次第を再び話し始めたのでありました。

(CMキャッチ)
「テンちぇるちゃん」「テンちぇるちゃ〜ん」「テンちぇるちゃぁ〜ん」
「ハァ〜イ、テテンチェルチェル、テテンチェル〜♪」

 三郎君とテンちぇるちゃんが暖簾をくぐって入ったのは、お茶屋という
ちょっとした飲み物や軽食を出すお店でした。
「ちわ〜。」
と店の奥に声をかけると、
「おや、三郎じゃないかい、今日は早いね。」
と気のよさそうな声とともに、割烹着姿のふくよかな烏天狗が
顔を出しました。
「あっおばちゃん、苺大福と渋いお茶を3つね。」
そのまま近くの座席に腰かけると、お茶を持ってきてくれたおばちゃんが、
カランとお盆を落としたのです。
「さっ三郎もついに彼女ができたのかい?。
 しかも外国の女の子っ!。
 おっおばちゃん、嬉しくてもう涙が止まんないょぉ〜。」
およよ〜と割烹着の端で涙を拭うふりをする彼女に、慌てて顔の前で手を振り、
「違うって、ただの友達だから、彼女とかそんなんじゃないから〜っ。」
と三郎くんが否定すると、どうでしょう、対面の椅子に座って笑顔だった
テンちぇるちゃんが驚いたような顔となり、俯いてしまったではないですか。
「そうなんだ・・・、ただのお友達だったんだ・・・。」
その表情は前髪に隠れてしまって見えなくなっていますが、身体も小刻みに
震え始めていたのです。
「いやいや、違うんだよ、いや、友達ってのは、ほら、友達なんだけどさ、
 なんてぇのか、言葉の綾っつうか、ほら判るだろ、別に嫌いとかそういうんじゃ
 ないんだし、なんて言えばいいんだよ、ほら、アレだよ、アレ、だからさ、
 なっなっ、泣く事ないだろ・・・。」
慌てて、身ぶり手ぶりで言い訳をしながら、三郎くんが彼女の顔を覗き込むと、
前髪に隠れた中から、ニパっと口元を横に広げ、必死に笑いを噛み殺している
テンちぇるちゃんと、目が合ったのでした。
「あ〜っ!、なんだよ、嘘泣きかよっ!。」
と席から立ち上がった瞬間、おばちゃんの持っていた おしながきが彼の頭頂部に
炸裂しました。
「ほら、女の子にからかわれたぐらいで、男がオタオタすんじゃないよ。」
頭を押さえた三郎が
「いってぇ〜っ、なんだよ、皆してからかいやがってっ。
 まぁ、いいや、物はついでだ、なぁ妖怪になる方法って知ってる?。
 なんかこの雪ダルマが妖怪になりたいって・・・。」
と机の上に置かれた雪ダルマを見ると、なんだかぐったりしていますし、
机の上にも、雪ダルマを中心に、水溜りが広がっていたりもしています。
三体が三体ともにその様子を眺めてしまいましたが、
「「「わぁ〜、溶けてるっ溶けてるっ!」」」
「おばちゃん、氷、氷、氷、氷、氷、氷、っ!」
「暖房を止めてっ止めてっ止めてっ!。」
他のお客さんをも巻き込んでてんやわんやの大騒ぎの後、雪ダルマを
クーラーボックスに収めてなんとか事なきを得たのでした。
今は、蓋を少し開けた隙間から、雪ダルマが覗いています。
「すいません、お手数をおかけしてしまいまして・・・。」
肩で息をしながら、それでも三郎くんは軽く手を振りました。
「あ〜、いいって、いいって。
 ちょっと驚いただけだから。
 そりゃぁ、暖房の利いた部屋に入りゃぁ、雪ダルマなんかすぐに溶けちまって
 当然だわな・・・。」
テンちぇるちゃんとおばちゃんも肩で息をしながら、コクコクと頷いて
くれています。
「まぁ、そのクーラーボックスは貸してあげるから、しばらくはそこに
 入っていたらいいよ。
 それにしても、なんだい妖怪になりたいって言うのは。」
さすが年の功です、先の話を忘れずに戻してくれました。
「実は、かくかくしかじかうんちゃらかちゃら〜と言う訳なんです。」
と、理由を説明すると。
「ふうん、妖怪になりたいって言ってもねぇ。
 私らは、なりたくてなったってより、生まれた時から妖だったからねぇ。」
それを聞いた雪ダルマがしょぼんとしてしまいました。
「、どうしたものかねぇ・・・。
 あっ、そうだ、それなら妖になった者に聞けばいいんじゃないかい。
 ちょっと待ってな、確か裏庭で陰干しをしていたはずだから。」
そう言うが早いか、彼女はお店の奥に入って行くと、棒のような物を手にして戻ってきました。
「やっぱり裏で陰干しをしていたから、連れてきたよ。」
彼女が手にしていた物は、この国で、昔使われていた傘でした。
西洋の傘に比べれば、骨も太く、傘自体も紙に柿渋を塗った茶色い物でしたし、
先端部分も尖っているのではなく、平らになっています。
しかし、なにより異彩を放っていますのが、その傘に二本の腕と、一本の脚が
生えており、傘の部分には大きな一つ目と口がある事でした。
「なんだよ〜、いい気持ちで寝ていたっていうのに、叩き起こしやがってよぉ。」
唐傘お化けは、眠そうに目を擦りながら文句を言っていましたが、
「なんかねぇ、妖怪になりたいってのがいてね、あんたなら判るんじゃないかと
 思ってさ。」
おばちゃんが指差した先には、クーラーボックスの隙間から覗く雪ダルマが
ピョコンとお辞儀をしていました。
「妖怪?、そりゃおいらは九十九神(つくもがみ)って呼ばれちゃいるけど、
 確かに妖だからな。
 で、こいつが妖怪になりたいって。
 ウ〜ン、けっこう年季が入っているようだし、後70年も経てば、九十九神に
 なれると思うぜ。」
 まぁ、クーラーボックスっていやぁ、道具としてはまだ新参だし、九十九神に
 なった奴って聞いた事はないけどな。」
三体の目が、唐傘お化けに集まりました。
「あっ、違います、違います、クーラーボックスじゃなくて、中にいる
 雪ダルマさんなんです。」
テンちぇるちゃんが蓋をガバッと開けた中に、雪ダルマがちょっと
申し訳なさそうな顔で、ペコリと頭を下げていました。
「雪ダルマ〜っ!?。
 九十九神は、使われていた道具が妖怪になるってものだからなぁ。
 雪ダルマは、道具になるのかなぁ。」
その場で、腕を組んで考える唐傘お化けでしたが、なにか思いついたようです。
「あっ、いい奴がいるじゃねえか。
 雪の事なんだから、お寺の小雪の姐さんに聞けばいいんじゃねえのか。
 ほら、雪女も雪ダルマも同じ雪がついているだろ。」
同列に扱うと怒られそうな気もしましたが、なんとなく説得力もありそうです。
こうして小雪さんに訊ねてみることになったのでした。

(CMキャッチ)
「テンちぇるちゃん」「テンちぇるちゃ〜ん」「テンちぇるちゃぁ〜ん」
「ハァ〜イ、テテンチェルチェル、テテンチェル〜♪」

 お茶屋を出て、空を飛ぶ三郎の首からかけられたクーラーボックスの中から
雪ダルマの声が聞こえてきました。
「すいません、なんだかおおごとになりまして・・・。」
「あ〜、いいっていいって、俺もテンチェ・・・んっんっ、
 困ってる時はお互い様だからな。」
三郎くんが、なんだかわざとらしく咳払いをしたりしていますが、嬉しそうなのは
隠す事ができていません。
2体並んでしばらくも空を飛んでいると、眼下に山寺が見えてきました。
勝手知ったる寺の中と言う訳で、クーラーボックスに氷を足してくると言う
三郎くんと別れ、テンちぇるちゃんは小雪さんを探しに行きました。
ですが、どこを探しても彼女は見つかりませんし、その辺りにいた妖達に
聞いてみても「今日は見ていない」との事でした。
どこか買い物にでも行っているのかしらんとお寺の中をうろうろとしていると、
廊下の先から、和尚さんの声が聞こえてきたのです。
これ幸いと、廊下を走り、角を曲がったところで
「あっ、和尚さん和尚さん、ちょっとお尋ねしたいのですけどっ!」
と近づいたところで、和尚さんの後ろにいる、見慣れない女性に気がついたのです。
「あっすみません、お客様でしたか。」
「あちゃ〜、またやっちまったよぉ〜」と思っていましたが、挨拶する彼女の横を、
その女性は会釈を返しながら通り過ぎてくれたのでした。
 やがて、お客を送り終わった和尚さんがテンちぇるちゃんの所に
戻って来ました。
三郎くんと一緒にいる雪ダルマを見ると、
「ほぉ、妖怪になりたいとな。
 ふむ、拙僧は、今まで自由に話をしたり、動き回る雪ダルマというものに
 お目にかかったことがないのじゃが、最近の雪ダルマはそういうものなのじゃろうか?。」
「「あっ!」」と三郎くんが、そしてテンちぇるちゃんも気がついたようです。
そう、既に、この雪ダルマが妖となっている事に。
しかし、妖となっても先の茶屋のように、温かくなると溶けてしまっては、
まずこの国の春・夏・秋を乗り越える事など夢のまた夢です。
「寺の冷凍庫では、さすがにのう・・・。
 そうじゃ、三郎殿、まだ近くに九尾様がおられるはずじゃ、しばし待って頂けるよう
 伝えてきてもらえぬか。」
三郎くんが飛び去った先を眺めているテンちぇるちゃんの傍らでは、彼女を見つけた
座敷わらしが、ニパッと満面の笑顔で両手を伸ばしていたのでありました。

(CMキャッチ)
「テンちぇるちゃん」「テンちぇるちゃ〜ん」「テンちぇるちゃぁ〜ん」
「ハァ〜イ、テテンチェルチェル、テテンチェル〜♪」

 今、雪ダルマは、それが一つの建物と言ってよい、いえ、もうどこかの
ドーム球場かと見間違うほどの、広い冷凍庫の中にいるのです。
天井からは、細かな雪がチラチラと舞い落ち、床には雪が積もっており、
その中を、幾つもの雪ダルマがピョコピョコと動き回っています。
九尾が用意してくれた冷凍庫の中で、最初は、あの雪ダルマが一体だけでしたが、
彼(彼女)が試しに雪ダルマを作ってみますと、それが同じように、
ピョコッと、落書きのような手足を出して動き始めたのです。
そして今、冷凍庫の中で、あの雪ダルマを神祖とした新しい国が生まれようとしていたので
ありましたとさ。

「その頃の小雪さんとトリオ・ザッ・鬼さん」
「もう、九尾はんは帰らはったやろか?」
「ががう、がうがうががう、がうがう。」
「そう言わはったかて、赤はんは、直接会う勇気ありおすん?。」
「がう・・・。」
「せやろ、こんな山の中まで来やあらへんと思うし、もうちょっと待ってから
帰ったほうがええんとちゃうおす。」
「「「がうん・・・。」」」

◎知らなくても困らない設定
○九十九神(つくもがみ) : 古くから道具は百年経つと命を得ると
考えられていましたので、それを避けるため、99年経つと捨てられていたのです。
ですが、中には、後1年で命を得られたのにという恨みから妖怪と
なってしまうものもあり、それを九十九神と言います。
ですが、本来この九十九は単なる99年という特定の年月を表しているだけでは
なく「長い年月」「数多くの」と言った意味を持ったものなのです。
ですから「99年で捨てられたから〜」という意味だけではなく、長い年月を経て、
命を持ち神(妖怪)となった物、また数多くの神(妖怪)という意味にもなります。
また、神と言われてはいますが、昔は神と妖怪の区別もそれほど厳密な
ものではなく、人智の及ばないものは、とりあえず神として奉っておけば
安心する事ができたのです。
一例としては、もともと恨みから悪霊となった菅原道真の祟りに恐れをなし、
神として奉ることで、その祟りを沈め、現在では学問の神として信仰の
対象となっているのは有名なお話ですね。
○お茶屋 : 飲み物やお菓子、軽食を出してくれるお店。
人の世界であれば、喫茶店のような お店です。
三郎くん達が入ったのは「双烏屋(そううや)というお茶屋で、烏天狗のおばちゃんが
切り盛りをしており、手作りの生菓子と渋いお茶が人気のお店です。
特に季節にもよりますが、苺大福、烏もち(くろ、抹茶、ニッキ)、
羽ひら餅(はねひらもち、ごぼうを餅で薄く挟み、羽の形に仕上げた生菓子)、
柏餅などに人気があります。
たまに、おばちゃんの創作生菓子も並んでいたりします。
ただ、当たり外れがあり、スタンダードにレギュラー商品を選ぶか、思い切って
期間限定の創作生菓子を選ぶかと、常連客を悩ませるのも、お客を飽きさせない
商売上手なところと言われています。
 他にも人の町と同じように様々なお店が軒を連ねていますが、普通、
人がこの商店街に、やってくることはありませんと言いますか、
結界があるため、入る事はできないようになっています。
しかし、どういう経路を通って来るのか、数年に一度ほど迷い込んで来る人が
いたりします。
だからと言って、妖怪達に美味しく頂かれるなんてことは、今の時代には
ありませんし、欲しければ普通に買い物もできますが、ちゃんと料金は
請求されます。
カード類の使用はできませんので、お気をつけください。
 昔迷い込んで来た若者達が、面白半分に双烏屋の壁に自分の名前を
書こうとして、後ろの席にいた塗り壁の背中に書いてしまい、怒った塗り壁に
危うく押しつぶされそうになると言う事件がありました。
その後、有名な左官屋に塗り壁を塗り直してもらって事無きを得たという
後日談があり、若者達にはかなりな出費となったようですが、もし店の壁や樹木、
石などに自分の名前を書いてしまった場合にはこちら側の者と認識されてしまい、
元の世界に帰れない状態となっていた事を思うと、その程度の出費で終わった事は彼らにとって
幸いだったと言うべきなのでしょう。

第12話 お・し・ま・い・♪。
(2021.3 by HI)

◆ ◆ ◆

今年はどういうわけか春が早くて、どこに桜を観にいこう?なんて心の準備も整わないまま
蕾はほころび、散り始めたというニュースまで流れています。
どうしてだろう?
季節が夏から秋に移ろうときには、人は過ぎゆく夏を惜しんで「夏が終わる」というのに
冬から春に変わるときには浮き立つ気持ちと共に春を迎え、冬のことはさっさと忘れてしまう。
無邪気に作った雪ダルマのことも。
そのことを意識することさえほとんどないことに気づき、心がちりりと痛みます。
そんな儚く消えてゆくものにあたたかな眼差しを向け、
小さな 雪ダルマさんも一緒に春に向かえる今回のお話は、
心にぽかぽか、優しい春を運んできてくれました。
そして心の春の後ろに、どこか懐かしい人生の春が
透かし彫りに映っているのも感じます。
それは、かわいいカップルのういういしいやりとりに。
それから雪ダルマさんがぴょこぴょこ跳ねるスノードームに。
まだ日常生活に困らないくらいの視力があったころ、雑貨屋さんで
掌サイズのそれをひっくりかえしては、紙吹雪の雪がきらきらと煌めくのを
飽かず眺めたものでした。
もう手を延ばしても届かないものたちが、命をもって
楽しそうに弾むのを、今、心に描くことができます。
幸せは身近なところにもある、そう小さな体で伝えてくれた
双烏堂さんのおいしい苺大福に感謝です。
って。
めっちゃキュートな雪ダルマさんも、良い味出してた和尚さんも九尾さんも小雪姐さんまでも差し置いて
花より団子なしめくくりになっちゃいました(笑い)
もちろん、最大の感謝はHIちゃんに。


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